美術館近くの雑貨店で出会った二種の酒器、ストライクゾーンにつき。【酒器も肴のうち】

お酒をつぐ器、お酒を飲む器。酒器に思いを巡らせると、気になってくるあの人のお気に入りや、あのお店のセレクション。酒器を愛でながら一献傾けるのが好きなライターによる酒器折々、酒器こもごも。

美術館近くの雑貨店で出会った二種の酒器、ストライクゾーンにつき。【酒器も肴のうち】
食楽web

 いろいろな方の酒器を拝見させていただくと、それぞれに素敵なエピソードが隠れていてどれも味わい深い。それを肴にして飲めると思うことが本当にある。

 ときどき同じ作家のものを持っていたり、これいいなあ、使ってみたいなあと思うことや、「あ、趣味が合うかも」ということもある。『酒器も肴のうち』第32献目の秋田県立美術館内「ミュージアムカフェ&ショップ光風」店長・菅原晶子さんが愛用している酒器を見た瞬間「あ、趣味が似ているかも」と感じた。

「斉藤ダイスケさんの白磁のぐい飲みです。とっても薄くて軽い。外側のブルーが内側に透けて見えてとてもキレイ。美術館近くにある雑貨店で購入しました。ほかにもカラフルでポップなものがたくさんありました。見ていて楽しい器ですよね」(菅原さん・以下同)

 素材こそ異なるが、うすはりグラスに似た軽さと薄さ。以前、当コラムで紹介した極薄のエッグシェルグラスのようでもある。なにより、マットな手触りとグレーがかったブルーは筆者好みで、お酒を注いでみたくなるぐい飲みだ。注いで、そして改めて透かしてみてみたい。菅原さんいわく「これ、たしかレンジでチンもできるんですよ」。そうなんですかー!? こんなに薄いのに? 必要以上に驚いてしまった。すいません。

「これも気に入っています。アイボリーがかった色合いはヨーロッパの器の雰囲気ですが、日本のものなんですよ。安定感があるし、持ちやすい。縁取りが茶色いのもあって、それも素敵でどっちにしようか迷ってコレに決めたはずなのに、今でも脳内で迷っています。あっちもよかったなあって(笑)」

 確かにヨーロッパの食器に見えなくもない雰囲気。佐賀県有田生まれのJICON(磁今)というブランドのものだという。よく見かける有田の焼きものとも異なるので、少し意外な気はしたが、色合いとデザインがこれまた筆者のストライクゾーン。

「これも同じ雑貨店で見つけたものです。とても素敵なお店なのでぜひ行ってみてください」と、菅原さん。美術館から歩いてすぐだというので、取材を終え、さっそく向かってみた。

 川沿いの古いビルの3階にあるその店に入ると、目の前にJICONシリーズが陳列されていた。菅原さんが迷ったという茶縁の酒器もあったが、筆者は脚付きの平盃に釘付け。こうしてまたひとつ、我が家に新入りが増えたのだった。つづく。

●INFORMATION

「ミュージアムカフェ&ショップ光風」

秋田県立美術館内のラウンジスペースにあるカフェ&ショップ。メニューの一部で供される川連漆器のコーヒーカップやケーキ皿は美術館オリジナル。現在、館内改修工事のため、4月6日まで休業中。リニューアル後の詳細は秋田県立美術館HPにて。
HP:http://www.akita-museum-of-art.jp/

●著者プロフィール

取材・文/笹森ゆうみ

ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。