あっさりと旨い、ダシが決め手の絶品焼きそば
小出屋は、中野駅北口に広がる飲み屋街の片隅にあり、屋台に木箱をかぶせたような店構えである。店内には椅子やテーブルはなくカウンターのみ。洒落っ気もなく、店先でお兄さんが汗だくになってヘラを振っている様は、ブームを全く無視した潔さを感じる。

早速、そわそわしながら焼きそば並盛り420円を注文。
焼きそばの具は、豚肉、キャベツ、人参、玉ネギ。そして、上には干し桜エビと青のりがハラリ。昔のお祭り屋台の具といえばカスみたいなサイズで、ないに等しいも同然だったが、小出屋のそれは、見た目も食感もはっきりと自己主張する立派なものだ。
そして、主役の焼きそばはというと、やっぱり前回同様。最初にふわっとソースの香りはすれど、ムチムチした麺を何度かみしめてもソースの味はない。どこまで行っても香る程度。それよりも強烈に感じるのはダシの風味。汁気はないのに食べれば食べるほどダシの旨みが口に広がる。深い旨み。いや深すぎる旨みと言っても過言ではない。
「なんて焼きそばだ!」
ソース特有のどぎつさはないし、塩味も控え目で、ベトつく油っこさもない。

生まれてこのかた、「ソース、ソース!」とアホみたいに主張して啓蒙活動に勤しんできたが、その思想が、もろくも崩れ去ったのである。想像の遥か上を行くダシ焼きそばの味わいを前にして、“ソース原理主義、屋台ソース派”から、“ソースふわっと主義、ダシしっかり派”への転向を認めざるを得ないことを確信。
ダシ焼きそばについて、がぜん、興味が湧いてきた。そこで、オーナーの荒井さんにお話を聞いてみることにした。