
東京・神保町から水道橋に続く白山通り周辺は、世界に冠たる書店街ですが、同時に気軽に入れる定食屋やラーメン、カレーショップなども軒を連ねています。そんな賑やかな場所に、また一軒、面白いお店がオープンしました。それが濃厚蟹みそラーメンの『石黒商店』です。
最近は“海老”を使ったラーメン屋さんが増えていますが、“蟹”とはなんとも贅沢です。そして何より珍しい! 一体、どんな味なのでしょう。さっそく取材に行ってきました。

神保町駅A4出口から1分ほどの白山通りの路地裏に、まるで昔からそこにあったような馴染んだ雰囲気で『石黒商店』はありました。扉を開けると「うわっ」と声を上げてしまいそうなほど、店内は蟹の香りで充満しています。

店を切り盛りするのは、ご主人の石黒勝也さんとその奥様。
「“蟹みそ”というと、お酒のアテのいわゆる“蟹ミソ”(蟹の内臓)をイメージするかもしれませんが、うちはその蟹ミソではなく、濃厚な蟹出汁の味噌ラーメンなんです」とご主人。「まあ、食べてみてください」と、オススメされたのは「特製濃厚蟹みそらーめん」(1100円)。

真っ赤などんぶりに、チャーシュー、コーン、玉ネギ、煮卵、もやし、たっぷりの岩のりのトッピング。蟹は見当たりませんが、丼からふわっと濃厚な“蟹の香り”がしてきます。まずは、スープを味わうべく、トッピングをかき分けて一口。

「おおお…」と思わず声が漏れるほど、カニの濃厚なエキスが口中に広がり、そのあと、まろやかな味噌の味が追いかけてきます。蟹の味噌汁を飲んだことのある人は多いと思いますが、あれよりもぎゅっと旨味が凝縮されていて、それをまろやかな味噌が包み込んでいるというイメージです。濃厚とはいえ、塩加減は控えめで上品な味わいです。
「この味噌は、『佐野みそ亀戸本店』の“噌ムリエ”である宮澤さんにお願いし、うちのラーメンのためにブレンドしてもらったお味噌なんですよ」と奥様。

中太のモッチリした麺に、このスープが絡まり、ツルツルと麺を食べ進むほどに、蟹風味が広がるのです。こんなに、蟹の旨味の濃厚なラーメンは初めてかもしれません。

作り手のご主人・石黒さんは、北海道のご出身。上京して会社勤めをしていた際、ラーメン好きの奥様に感化され、味噌ラーメンの名店『東京スタイルみそらーめん ど・みそ』で修業。数年を経て、独立したそうです。
「蟹を使った味噌ラーメンというのは、実は北海道でもほとんどないんです。そこで、修業先で勉強させていただいた味噌ラーメンをベースに蟹出汁のラーメン専門店を作ろうと思ったのです」(石黒さん)
その蟹出汁を見せていただくと、寸胴にこれでもかというほど蟹、蟹、蟹。

「でも、この蟹だけでうちのスープができているわけでないんです」と石黒さん。その言葉通り、じつは煮干しなどの魚介系と、若干の動物系のスープを別にとり、蟹出汁とバランスよく合わせたトリプルスープなのです。さらに、蟹と油を何時間も煮込んだ“特製蟹オイル”を作り、最後にスープに回し入れることで蟹の風味と旨味を倍加させているそう。

メニューは他にもあります。悶絶級の辛さの「雷神らーめん」(1480円)や、パンチの効いた「ニンニクみそらーめん」(980円)など。中でもぜひ味わって欲しいのが「カレーみそらーめん」(1000円)です。これは、前店の『ど・みそ』で一緒に働いていた同僚たちからも絶賛されている一品だそうです。

ご主人自ら配合した9種類のカレースパイスと、蟹の濃厚出汁がコラボしたラーメンは、まさに唯一無二のスープカレー麺です。
神保町界隈は、カレーの街でもあり、毎年開催される「神田カレーグランプリ」では、投票スタイルでランキングも発表されます。この「カレーみそらーめん」は絶対上位にランクインするのでは? と思わされる美味しさ! ぜひ、皆さんも「濃厚蟹みそらーめん」に続けて「カレーみそらーめん」も忘れずに食べてみてください。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:濃厚蟹みそらーめん 石黒商店
住:東京都千代田区神田神保町2-2-14
TEL:03-6272-3977
営:11:00~スープが無くなり次第終了
休:不定休