吉田うどんを初体験!

注文から10分ほどで「吉田うどん」(300g、トッピングに馬肉、ちくわ天)が登場しました。想像以上にうどんが硬そう。思わず「これ、本当に茹でました?」と聞きたくなるようなゴワゴワ感です。
箸で引っ張り上げた1本は思いのほか長く、さらにぎゅっと圧縮したような密度。だからずっしり重い! 噛むと、ムギュッ、ムギュ、ワシッ、ワシ、ゴワッ、ゴワ。自分のアゴから耳に伝わる音にびっくりするほど。そして、すすりたくても、ここまで硬いとまったくすすれません。ひたすらモグモグと噛むしかないんです。

しかし、こんなに硬いのに美味しい! しかも食べるのがとても楽しいのです。なぜなら噛む回数が多くなるので、わき目もふらず、うどんと向き合うことになります。すると必然的に、小麦の風味とつゆをじっくり味わうことができるのです。しかも、合間にいただくトッピングの美味しいこと。とくに馬肉のぷるぷるとした食感と甘辛さが優しく、さらに卓上の「すりだね」という吉田うどんに欠かせない辛い薬味がまた旨い!

最後の方はアゴがへとへとに疲れてきますが、「ひー、ふー」と言いながら、最後の1本を食べるときには少しもの寂しい気持ちにすらなります。そして完食すると妙な達成感があり、「吉田うどん、最高」と思わず口走ってしまったほどです。
「吉田うどん」はなぜ硬い?
ちなみに、山梨県富士吉田にはうどん屋が60軒以上あります。揃いもそろってすべて硬いうどんなのだそうです。
なんでも、この硬いうどんが根付いたのは、昭和初期、この地で織物業が盛んになったのがきっかけだそうです。一般家庭で機織りを行う女性に手間をかけさせないように、ということで男性がうどんを作るようになり、力任せにうどんをこねたために、コシがありすぎるうどんが主流になっていったそうなのです。いや、いくらなんでも硬すぎだろ、とツッコミを入れたくなりますが、なんとも面白いエピソードです。

もちろん、こうした伝統的な吉田うどんと同じく、『五葵』さんでも、ご主人による自家製麺で、うどんの歯ごたえと旨みを最大限に引き出す製法で作っています。
数種類の小麦粉(外国産と国内産)を混ぜ合わせ、その日の温度・湿度により小麦粉に加える水の量を調整。一定温度で麺を休ませ、機械でギュッギュッとプレスし、再び一定温度で寝かせます。こうすることで、硬い麺でもすみずみまで水分が行きわたり、うまみ成分を最大限に引き出すことができるそう。
また、お出汁は、北海道産昆布・九州産イリコ・九十九里産煮干し・干しシイタケをベースに4種類の節を加え、風味豊かな黄金のおつゆを作成。その基本出汁に、温かいうどんの場合は薄口醤油ベース(3種類の醤油)と北海道産の3種類の味噌を加えた醤油&味噌の香り豊かなスープ。冷たいうどんの場合は、基本出汁に濃い口醤油ベース(3種類の醤油)とワインなどを加え、さらに追い鰹をすることで、非常に風味のよいスープに仕上げているそうです。
いやはや、『五葵』さんの「吉田うどん」は硬いだけでなく、非常に繊細なのです。この体験をきっかけに、本場の富士吉田市に行ってみたくなりました。みなさんもぜひ「吉田うどん」を体験してみてください!
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:自家製麺うどん 五葵(ITSUKI)
住:東京都葛飾区西亀有3丁目20-14
TEL:03-6321-5797
営:11:30~14:30(14:20LO)、17:30~21:00(20:30LO)
休:第1木曜日、第2・第4日曜日(連休の場合は通常営業)その際の連休明け日、第3・第5木曜日夜、日曜日夜(月曜日連休の際を除く)
https://udon-itsuki.com/noodle