果たして「セコさ」を貫けるのか?
しかし「セコい」行動と自覚していることを、いい大人がいざ実行するとなると、非常に苦しいものです。見栄を張るほうがずっとラク。例えば「ぶっかけ」にトッピングの天ぷら各種を好きなだけ載せて豪華にするのは簡単です。
しかし「天丼用ごはん」(130円)だけを注文し、何もトッピングせずに会計することは想像するだに恥ずかしく、勇気のいることだと思いませんか。
まず店員さんとのファーストコンタクト。それによって向けられる周囲のお客さんの視線。今日に限ってなぜこんな服を着てきたのか…などとものすごく自意識過剰になっていかざるを得ないのです。
そこで、せめて一番お客さんがいなさそうな時間、平日17時に訪店しました。

ところが、さすが『丸亀製麺』。幸か不幸か、そんなアイドルタイムでも盛況でした。最初の注文からトッピング、会計までの一連のレーンは行列ができています。
そして最初の関門は、ベースのうどんを注文するおじさん店員さんとの会話。そのおじさんは、俳優の遠藤憲一さんのようなコワモテ。黙々とお客さんをさばいていきます。
遠藤さんもどきの頭上を見上げるとメニューには、「うどんとご一緒に」というコピーと共に「天丼用ごはん130円」の文字をしっかり確認。小声で注文しました。
すると……

筆者:「天丼用のご飯をお願いします」
遠藤店員:「はい??」
聞こえないようです。
筆者:「あの、天丼用ごはんを……」
遠藤店員:「はい??」
聞こえないふりでしょうか。
筆者:「…じゃあ…」
遠藤店員:「ざるですね」
なんと、「じゃあ」と言ったはずなのに「ざる」と聞き間違えられてしまいました。
そう、無理なんです。そもそも「うどんとご一緒に」と定められたサイドメニューだけを注文するなんて、どんなにセコい人間でも、強行突破は難度が高い…。というわけで、やむなく「ざるうどん」をメインにオーダーし、「天丼用ごはん」をサイドメニューとして頼むという奇策に出ました。
すると、すぐさまその2つがやってきてトレーに載せられました。当然ながら、一面、真っ白です。

恥ずかしいので、そのまま一気にお会計に進みたいところですが、前の人が「かしわ天」「いか天」「えび天」「さつまいも天」など魅力的なトッピングメニューをトング片手に楽しそうに選んでいるので、追い抜くことができません。
筆者としては、いち早く無料トッピングの天かすコーナーに行きたいのですが、その場所は会計を終えた先。まるで万引き主婦のようにひたすら下を向き、会計の順番を待ちます。

真っ白なままのトレーなので、恥ずかしさのあまり、お会計のレジの人と目を合わさないようにして「計420円」を支払い、まっしぐらに無料の天かすコーナーへ向かいます。


人目もはばからず、オタマで思いっきり天かすをよそい、続いて同じく無料である青ネギもしこたま載せます。このとき、周囲を決して見回してはいけません。「セコい人間がいる」という視線を感じてしまうと、「天かす天丼作り」に挫けてしまいます。最後に、自家製天ダレを2~3周、回しかけて、やっとのことで130円天丼を完成させました。
そうして、そそくさと一番目立たない端っこのテーブルに着席。

