行列のできる老舗洋菓子店『マッターホーン』(学芸大学)。なぜ世代を超えて愛され続けるのか?

行列のできる老舗洋菓子店『マッターホーン』(学芸大学)。なぜ世代を超えて愛され続けるのか?
バウムクーヘンカット350円(税込)。消費期限は購入日から4日間

●おいしいローカル部が見つけた地元のおいしいお菓子屋さん。今回は、学芸大学で70年以上愛され続ける『マッターホーン』の魅力を探りました。

口にすれば思い出がよみがえる。優しさと技術が宿る洋菓子たち

 お菓子には、心をほどく力があります。ひと口で幼い頃の記憶が蘇ったり、大切な誰かの笑顔が浮かんだり。学芸大学の『マッターホーン(MATTERHORN)』は、まさにそんな記憶に寄り添う洋菓子店。昭和23年創業、70年以上続く老舗です。

 ショーケースに並ぶケーキや焼き菓子には、どれも丁寧に手をかけられた優しいおいしさが詰まっています。地元の人たちが記念日も、なにげない日も「ここに行けば間違いない」と信頼を寄せる存在。それが『マッターホーン』です。

学芸大学駅から徒歩3分。町とともに歴史を重ねてきた名店

クラシカルな看板が目印
クラシカルな看板が目印

 東急東横線・学芸大学駅の西口から歩いて3分。線路沿いを都立大学方面に少し進むと、『マッターホーン』が見えてきます。

 お店の名前は、スイスの名峰「マッターホルン」から。創業者がヨーロッパで学んだ味と哲学をもとに、お菓子づくりをスタートさせました。現在は三代目がその味を継承し、店内の自社工場で職人たちが一つひとつ丁寧に焼き上げています。

 催事や出張販売を行わず、一店舗だけで勝負する姿勢にも、おいしさへの強いこだわりが滲んでいます。

一度食べたら忘れられない。看板商品の「バウムクーヘン」

「バウムクーヘン丸型」2,200円(税込)
「バウムクーヘン丸型」2,200円(税込)

 マッターホーンの代名詞ともいえるのが「バウムクーヘン」。開店直後から売れ始め、午前中でも売り切れてしまうほどの人気商品です。

 どっしりとした重量感、しっとりなめらかな口当たり、ふわっと香るラム酒の風味……どこを取っても丁寧な仕事が伝わる一品で、「もう他のバウムは食べられない」と言うファンも少なくありません。もちろん筆者もその一人。

 長年変わらぬレシピで作られたどこかホッとする味わいは、幅広い年代に愛されており、手土産としての人気も不動のものとなっています。

丸型のバウムクーヘンには誕生日など記念のプレートもつけられます。税込3,000円(要予約)
丸型のバウムクーヘンには誕生日など記念のプレートもつけられます。税込3,000円(要予約)

 包み紙に描かれたオリジナルの可愛らしいイラストは画家・鈴木信太郎のデザイン。贈る相手の笑顔を引き出します。

1日200個以上売れる名物ケーキ「ダミエ」

「ダミエ」350円(税込)
「ダミエ」350円(税込)

 また、ケーキもお忘れなく。
 1日200個以上売れるという名物「ダミエ」は、2種のスポンジの市松模様が美しいチョコレートケーキで、見た目の可愛らしさとクラシカルな味わいが魅力です。軽やかなスポンジに、なめらかな口どけのバタークリーム。そこにオリジナルのチョコレートが絶妙に重なり合い、どこか懐かしく素朴な味わいに仕上がっています。

地元の人の憩いの地。お菓子と共に流れる、ゆったりとした時間

季節の限定デザートプレート「アシエットデセールフリュイセゾン」 800円(税込)*写真は5、6月のもの [食楽web]
季節の限定デザートプレート「アシエットデセールフリュイセゾン」 800円(税込)*写真は5、6月のもの [食楽web]

 店内奥の喫茶スペースでは、ショーケースで選んだケーキや季節のデザートをゆっくり味わうことができます。

平日は1人利用も多いです
平日は1人利用も多いです

 壁には同店の包装紙やパッケージの挿絵を描いている鈴木信太郎の絵画が飾られ、シャンデリアや大理石調のインテリアと相まって、まるでギャラリーのような上質な雰囲気。ケーキとコーヒーを前に、ふと時間を忘れる。そんな豊かなひとときを楽しめます。

お菓子は、家族や季節の記憶とともにあるもの

手土産にぴったりな焼き菓子も豊富
手土産にぴったりな焼き菓子も豊富

『マッターホーン』が愛され続けるのは、お菓子がおいしいからだけではありません。そこには、家族で囲んだテーブルの記憶や、大切な人への想いがあるから。子どもの誕生日に、祖父母の家への手土産に、節目の贈りものに……。

 ここには、何度も“ありがとう”や“おめでとう”が交わされてきた歴史が積み重なっています。それはきっと、地元の人だけでなく、遠方からわざわざ訪れる人々にとっても同じ。

 そんな“心のアルバムをめくるような味わい”を、『マッターホーン』で楽しんでみてください。

(撮影・文◎柴田 珠実)

●SHOP INFO
マッターホーン(MATTERHORN)

住:東京都目黒区鷹番3-5-1
TEL:03-3716-3311
営:ケーキショップ/9:00〜18:30
喫茶室/12:00〜17:00(L.O.16:30)
休:火曜(祝祭日の場合は営業)
https://matterhorn-tokyo.com/

●著者プロフィール

柴田珠実

紅茶マーケター/フードアナリスト。食品メーカーで紅茶のマーケティングを担当し、年間50品以上の新商品を企画・開発。市場ニーズと味覚トレンドを読み解く力に定評がある。出身地の千葉県や伊豆大島の観光大使や、テレビ番組のレポーター経験も持ち、日本各地の食や文化を伝える活動を続けてきた。「五感に響く体験を届けたい」を信条に、食と旅、地域、文化をつなぐ表現を探求中。
@ tt.wedding.account

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