すべてのスイーツはコーヒーのためにある!?

今回、注文したのは、トリコロールのなかでも特に人気の「エクレア」(650円)とのセットと「アップルパイ」(710円)。店長の野崎さんは「コーヒーと一緒に味わっていただくことをおすすめします」とのこと。
すべてのスイーツはコーヒーに合うように作られているそうです。そこで「アンティーク ブレンドコーヒー」(1070円)を合わせました。コーヒーとセットにすると、エクレアは1570円、アップルパイは1630円になります。
「アンティーク ブレンドコーヒー」は、中南米の標高の高い山で収穫されたコーヒー豆を独自にブレンドしています。注文が入ってから豆を挽き、ネルを使用したハンドドリップで丁寧に抽出しています。

「1936年創業時のことを知る資料は、東京大空襲で建物とともにほとんど焼失してしまったため詳しくはわからないのですが、〈アンティーク ブレンドコーヒー〉は、戦後の昭和30年代に良質な豆が入ってくるようになり、創業時の味になるべく近づけるようにブレンドされた味だと聞いています」と、広報担当の相馬さん。
一方、エクレアは2006年頃から販売開始。実はエクレアも創業時にメニューに入っていたそうですが、どんな形で提供されていたかは不明とのこと。現在提供されているエクレアは、注文を受けてからシューにクリームを詰めてチョコレートで仕上げているそうです。
チョコがかかっていないプレーンなタイプと、エクレアの2本セット。添えられた小瓶には、クラッシュしたナッツが入っていて、チョコクリームにふりかけていただくこともできます。

サクッとした歯ごたえのシューの中から、しっかりとした甘みのあるクリームが口いっぱいに広がります。そこへすかさずコーヒーをひと口。確かに、びっくりするほどよく合う! クリームの甘みとコーヒーのまろみのある酸味が溶け合って、まさに最高のマリアージュ。この絶妙な味のバランス、完璧としか言いようがありません。
リンゴがあふれ出ているアップルパイも絶品

「アップルパイ」は、リンゴを一つひとつ丁寧に皮をむき、味がしっかりとしみるまでじっくりと煮て、パイ生地で挟んでいます。1カットにリンゴ約1個分が使われているとか。もうパイからはみ出しそう……というか、はみ出ちゃってますね。
「当社のブレンドコーヒーは酸味がありますので、アップルパイには酸味の少ないリンゴを時季ごとに厳選し、コーヒーに合うように作っています」(相馬さん)
確かに、アップルパイもコーヒーとのバランスが素晴らしい。コーヒーがアップルパイを引き立て、アップルパイがコーヒーを引き立てる。「相性がいい」といった曖昧なものではなく、パイ、リンゴ、コーヒー、すべてが揃って完成するよう、緻密に計算され尽くしているイメージです。
まとめ

「コーヒーを広めたい」という思いで創業された喫茶店だけに、コーヒーのおいしさはもちろんのこと、エクレアもアップルパイもコーヒーの味わいを完成させる役割をしっかりと担っています。過不足が何一つありません。インテリアも含めてすべてが調和する完璧さ。日本のコーヒー文化の底力を感じられること間違いなしの名店です。
(取材・文◎松みのり)