いざチチハル焼肉を実食しよう!

店は意外なほど広くて清潔感がある明るい雰囲気です。この店は2023年10月現在、平日はディナータイムのみ、土日祝日はランチも営業しています。今回は土曜日の12時頃に行ったのですが、この時点で他のお客さんはゼロ。

でも笑顔の可愛い明るい店員さんが元気に案内してくれました。「中国人は来るの遅いの! 夜は混んでるよ~」だそうで、その言葉どおり、13時過ぎくらいから続々とお客さんが入ってきたのでした。

窓際の明るい半個室のような席に案内してくれました。早速オーダーしてみましょう! ランチメニューはなく、昼間でもレギュラーメニューから選ぶ形式です。今回は1人ランチなので食べ放題ではなく単品でオーダーします。

メニューは日本式の焼肉などもあるのですが、店員さんに教えてもらいながら、なるべくチチハル焼肉らしいものをオーダーすることに。
カテゴリーの中にある「家庭伴肉」というのがチチハル焼肉。肉は日本の焼肉の定番である牛肉だけでなく、羊、豚、鶏とひと通り揃っていて、好みのものを選べます。今回は、羊肉(ラム肉)にしてみました。一皿1408円です。

そしてチチハル焼肉の特徴の一つがこの調味料セットです。これは「タレ」と呼ばれていますが、液体はなく全て粉なのです。これを好みで混ぜ合わせて肉につけて食べるわけですね。

さて、注文した料理がやってきました。チチハル焼肉は肉と野菜をセットで焼きます。

羊肉は若い羊のラム肉。見るからに新鮮でおいしそうな色です。それが玉ねぎ、パクチーと共に薄い塩味のタレで和えられて出てきます(パクチーが苦手な人は抜いてもらえます)。

チチハル焼肉に欠かせないのがこの酸菜。中国東北部で冬に作られる白菜を自然発酵させた漬物です。酸味も塩味も淡く優しい味です。
中国では、この酸菜を焼肉のほか、鍋物に入れたり、豚ひき肉と合わせて水餃子の具にしたりもします。野菜は他の種類も選べるのですが、今回は一人だったので、もっとも特徴的な酸菜だけにしました。

チチハル焼肉には独特の焼き方があるので、店員さんにその流儀を教えてもらいながら実践しました。まず、鉄板が温まったら、鉄板の中央に肉を置きます。

肉はとりあえず半量を置きました。そして、肉を中央に置いた後に鉄板の周辺部に野菜を並べます。ジンギスカンみたいですね。

肉は途中で2、3回ひっくり返しながらじゅうじゅう焼きます。

焼肉を育てているうちに、つまみの干豆腐サラダも到着。ガチ中華の店ならどこにでもあるこのサラダ、干豆腐のしっかりした感触も口に楽しく、低糖質で酒の進むつまみなので、ほぼ毎回必ず頼みます。写真を撮り忘れましたが、この日のお供はビールです。

調味料セットの中で一番山盛りになっているのが、この黄色い「タレ」です。ごま、クミン、ピーナッツ、塩などが混ぜられた、お店のオリジナル。詳しい配合は秘密だそうです。

これをベースに、周りにある唐辛子、花椒などを好みで混ぜて、自分だけのオリジナルタレを作ります。

干豆腐サラダを肴にビールを飲みながら、鉄板の肉を育てます。ジュージューと良い音を立てながら焼ける肉の香ばしい香りが漂ってきます。のんびり楽しいぼっち焼肉です。
さあ、良い感じに焼けてきたので食べてみましょう!

良い塩梅に焼けた羊肉と酸菜をタレ(粉)につけます。粉しかないのは不思議な感じもしますが、これがチチハル焼肉です。ちなみにテーブル上には液体の焼肉のタレもあったので、店員さんに「これは使わないの?」と訊いてみたら、そんな! とんでもない! という表情で首をブンブン横に振って「それは違う! 使わないです!」だそうなので、間違っても使わないように。(日式焼肉用のタレだそうです)

「タレ」をしっかりつけた羊肉と酸菜を一緒に箸でつかんで口に放り込みます。そしてゆっくり噛みしめます。
旨い! とっても旨い。
まず、羊肉の下味がちょうど良い。肉自体の味を邪魔せず新鮮な羊肉の旨みを引き出しています。そこに絡む粉の「タレ」が香ばしさと辛味、複雑な香りをプラス。そして発酵した白菜がそこにさらに旨みを足しています。旨みが何重にも積み重ねられています。塩味は控えめなのでご飯を呼びません。ビールやその他の酒にはこれが最適です。いくら食べても疲れません。
今回は一人なので肉はこれだけにしましたが、何人かで色々な肉を頼んでみたいです。そして、チチハル焼肉を焼肉の定番にしたい、そのくらい気に入りました! チチハル焼肉が日本でも人気になって、店も増えると良いなと思います。みなさんも、怪しいビルのエレベーターの前で諦めず(笑)、ぜひ行ってみてくださいね。
●著者プロフィール
工藤真衣子
Photographer:人物を中心に様々な媒体で撮影。グラビア、インタビュー、プロフィール、ドラマ映画スチールなど。ライター:食レポ、レシピ記事は現地系異国メシ、珍しい食材、味のある店など個人的に好きな店や料理を紹介。新宿御苑前で写真館「スタジオ アトリーチェ」経営。