もろみ造り=仕込み。並行複発酵とは?【後編】|今さら聞けない日本酒

もろみ造り=仕込み。並行複発酵とは?【後編】|今さら聞けない日本酒
食楽web

日本酒、楽しんでますか? 米と水で醸されることは知っているけれど、実際、それがどのように作られ、日本酒となっていくのか、知らない人も多いのでは? 麹、酵母、醪、発酵……。確かに難しそうに思える日本酒用語。けれど、その基礎を知っておくだけで、日本酒はもっと身近に、もっと楽しく、美味しいものになることは間違いありません!

 前回まではもろみ造りにおける三段仕込みについて取り上げたが、留添えを終えれば、もろみ造りが終わりかといえば、そうではない。ここからじっくりとアルコールを発酵させていく段階に入る。そこがまた、もろみ造りの肝になる。

 三段仕込みを終えた(留添えを行なった)日から次なる工程である、もろみを絞る「上槽」にいたるまでの日数を「もろみ日数」と呼び、一般的には2〜3週間を要する。この間、もろみの品温を調節しながらアルコールを発酵させていくのだが、品温をある程度の高温で管理し、短期間で発酵を終えるものを高温短期発酵型と呼ぶ。一方で、もろみの品温を低く管理し、もろみが発酵を終えるまで時間を、じっくりとかけていくことを低温長期発酵型だ。後者は吟醸酒に代表されるように、雑味が少なく酒質がキレイで、味に膨らみのある酒が生まれる。こうして段仕込みを終え、2〜3週間(長いものだと1ヶ月からそれ以上)ほどかけて発酵を終えると、いよいよ上槽と呼ばれる工程へ。もろみを絞っていく段階になる。

 ところで、日本酒におけるもろみ造りの最大の特徴のひとつである「並行複発酵」にもここで触れておこう。これは、もろみ造りのタンクの中で、米麹による米のデンプンの糖化、その糖分を酵母が分解するアルコール化という2つの反応が同時発生的に行われる発酵のこと。同じ醸造酒でも、原料(ブドウ)そのものに糖分を含むワインは糖化の工程がない単発酵、糖化とアルコール発酵を別々に行うビールは単行複発酵になる。

 世界でも類をみないこの並行複発酵という醸造法が、日本酒の奥深い味わいを生み出す秘密のひとつにもなっていることは、ぜひ覚えておきたいところだ。

●著者プロフィール

監修/栗原信利

東京農業大学農学部醸造学科卒業後、兵庫県の酒蔵で蔵人として働き、町田市に本店を持つ「さかや栗原」の店主に。全国小売酒販青年協議会会長、International SAKE Challenge日本人審査員も務める。2017年3月には、町田駅近くに「立ち呑み栗原」をオープンした。