日本酒が出来るまで。その1|今さら聞けない日本酒【第3回】

日本酒が出来るまで。その1|今さら聞けない日本酒【第3回】
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日本酒、楽しんでますか? 米と水で醸されることは知っているけれど、実際、それがどのように作られ、日本酒となっていくのか、知らない人も多いのでは? 麹、酵母、醪、発酵……。確かに難しそうに思える日本酒用語。けれど、その基礎を知っておくだけで、日本酒はもっと身近に、もっと楽しく、美味しいものになることは間違いありません!

 第3回からは、実際に日本酒の仕込みについてご紹介したい。そもそも日本酒の原料となるのは水と米であるが、それがどのようにしてお酒になっていくのか見ていこう。

 日本酒製造の第一工程となるのが、玄米の精米の工程だ。これは、玄米を外側から削っていく作業で、なぜ米を削る(磨く)かといえば、米の外側の部分に多く含まれる成分が、必要以上に多すぎると日本酒の味わいや香りの邪魔になるからだ。精米は日本酒の味わいに大きな影響を与え、一般的に米を磨くほど日本酒はすっきりとした味わいになるといわれている。たとえば、日本酒のラベルに精米歩合70%と書かれていれば、それは玄米を30%削ったという意味。45%であれば米を半分以上の65%も磨いたことになる。

 そして、精米した米は、洗米され、水に浸けて吸水させていく浸漬という工程に入る。浸漬を終えると今度はその米を蒸し上げる。この工程を蒸きょうと呼び、蒸された米は後の麹造り、酒母造り、醪造りに使われていくことになる。

 米が蒸されると、次に行われるのが麹造りだ。日本酒の仕込みでは、「一麹、二もと、三造り」といわれるほど、重要な工程のひとつとなっている。

 では、なぜ麹造りが大切なのか? ごく簡単に説明すると、日本酒造りでは、最終的に酵母が糖分を分解してアルコールを発生させお酒となるのだが、原料となるのはお米には糖分がない。その糖分を生み出すのに必要なのが麹菌の持つ分解酵素なのだ。

 実際、麹造りがどのように行われるのだろう。蒸し米にカビの一種である黄麹菌を蒸し米にふりかけ、麹菌が増殖させる。その麹菌はさまざまな分解酵素の供給源となるのだが、その中に米の持つデンプンを分解してブドウ糖を作りだすアミラーゼというデンプン分解酵素があるのだ。アミラーゼに限らず麹菌の持つまざまな分解酵素は、その後の仕込みにおいて日本酒の味わいを大きく左右する要素にもなってくる。それゆえ麹造りは、日本酒の仕込みにおいて重要な工程のひとつとされているのだ。

 蔵人が神経をすり減らし、寝る間を惜しんで向き合うのは、温度変化に敏感な優良な麹菌を増殖させ、米麹を作るため。蔵人にとっては、日本酒でも最も過酷な作業となる。

(取材・文◎大西健俊)

日本酒が出来るまで。その1|今さら聞けない日本酒【第3回】

●プロフィール

監修/栗原信利

東京農業大学農学部醸造学科卒業後、兵庫県の酒蔵で蔵人として働き、町田市に本店を持つ「さかや栗原」の店主に。全国小売酒販青年協議会会長、International SAKE Challenge日本人審査員も務める。町田駅近くに新店舗を準備中。