日本の洋食の原点を凝縮した「大人のお子様ランチ」とは?

元町・中華街を降りて、徒歩1分ほどの場所にあるホテルニューグランド。山下公園を望む絶好の場所に、昭和2年(1927年)に開業し、今年で90周年です。本館の扉をくぐると、青い絨毯が敷かれた長い階段が目に飛び込んできます。見上げると、大きな古時計。タイムスリップした気分で左手にある1階の『ザ・カフェ』へ。

山下公園の緑が見える窓際を陣取り、着席して15分ほど。シックな空間をバッと華やかにする「大人のお子様ランチ」が登場しました!

歴史を丸ごといただきます。
まずはシーフードドリアから。1927年に就任した初代料理長サリー・ワイル氏は「コック長はメニュー外のいかなる料理にもご用命に応じます」とメニューに記していたそうです。そして、体調の良くないお客様から「何か喉の通りが良い料理を」と頼まれ、考案したのがこのメニュー。1935年のメニューには「芝海老のドリア」として載っています。
スプーンでひとすくい口に運ぶと、エビ、お米、マッシュルームを包むようにトロトロのグラタンソースとチーズが口の中でとろけます。エビの香り・味ともに濃厚で、お米が一粒一粒の食感が絶妙です。また、芝海老とバナメイエビの2種類、貝柱、マッシュルームといった具材が、ひとすくいで全部スプーンにのるほど具沢山!

続いて、スパゲティ・ナポリタンです。こちらはサリー・ワイル氏の気質を受け継いだ2代目総料理長・入江茂忠氏が考案したメニュー。
終戦後、ホテルがGHQ将校の宿舎として接収されていた頃、彼らが軍用保存食のスパゲティにケチャップを和えているのを見て、それでは味気ないと、ハムなどの具材やフレッシュなトマトを使用して作ったソースで作り上げたのがナポリタンです。
その調理法は今でも変わらず、茹でたパスタを一晩寝かせてからオリジナルのトマトソースを絡めます。もっちりとした食感とまろやかなトマトの酸味と優しい甘みの贅沢なナポリタンです。

次はハンバーグステーキです。ハンバーグは、もともとドイツ・ハンブルクの食べ物。そして、デミグラソースは、1900年初頭にフランス料理で使われ始めたソースといわれます。先述の通り、この2つを合体し、日本にデミグラソースを広めたのもこちらのホテルだと言われているんですよ。
ふわふわのハンバーグをカットし、ソースに絡めて味わえば、肉汁の旨みと濃厚かつ繊細な味のソースが口いっぱいに広がります。

最後にご紹介するのは、カスタードプリン。こちらも1935年当時のパティシエが考案した「プリンア・ラ・モード」に入った自家製プリンです。昔ながらの、卵の味がしっかり味わえる固めの食感が嬉しい! 甘すぎずあっさりしているのも特徴です。

「プリンア・ラ・モード」は、当時、ホテルに在住していたアメリカ人将校夫人を喜ばせるために考案されたそうです。その時は、たくさんの果物と、彼女たちが日常的に食べていたプルーンの水煮、バニラアイス、プリンを盛り付けたそう。ちなみに、この中にある“うさぎの形をしたリンゴ”は、本当はアローカット(弓矢型に切ること)という手法で、こちらの「プリンア・ラ・モード」から日本中に広まったといわれています。“元祖”が本当に多いんです。

この他にも本日のスープやコーヒーがついて、お腹もいっぱいに。そして、帰りにぜひ見ていただきたいのが本館1階で展示されている「開業90周年記念写真展」。こちらにもホテルの歴史や料理の歴史が詳しく紹介されています。最後は、本館2階のロ重厚なロビーのソファでくつろいで、洋食文化に貢献したクラシックホテルの歴史に思いを馳せれば心も満たされます。この機会にぜひ。

(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:ホテルニューグランド本館1階 コーヒーハウス「ザ・カフェ」
住:神奈川県横浜市中区山下町10番地
TEL:045-681-1841(代)
営:11:00~21:30(21:00L.O)
※「大人のお子様ランチ」提供時間は11:00〜20:30(L.O)
休:なし