肉まんや豚まんといえば、コンビニ、スーパー、デパート、商店街など、さまざまな場所で売られている身近な軽食。ふかふかの真っ白の饅頭の中に肉汁したたる肉々しい餡。想像しただけで喉が鳴りますよね。
筆者は無類の肉まん好きなので、いろんな街の商店街でふかしたての蒸籠を見かけると、つい吸い寄せられて「1個ください」と口走ってしまいます。
しかし、これまで数え切れないほどの「肉まん」を食べてきて、正直、突き抜けて夢中になるものに出会ったことがありません。ところが、つい最近、自分が理想とする最高峰の肉まんに出会ってしまいました。かぶりついた瞬間、「こんなの食べたことないっ!」と、口走りそうになるほど。
それが、東京・板橋区大山の遊座大山商店街にある『高野』という肉まん専門店の「肉饅」(300円)です。
お店の外観を見てください。でっかい肉まんのポスター。思わず立ち止まってしまう店構えではないでしょうか。かくいう筆者もポスターの迫力に惹かれて、中に吸い込まれてしまっただけでなく、入店後に「肉まんあんまん全種類ください!」と口走ることになりました。
なぜなら、こちらの点心がとんでもなく希少なものだとわかったから。その理由は、料理長の高野文雄さんが、中国で1600年以上の歴史のある正統な“老麺”を受け継ぐ日本で唯一の「老麺師」だからなのです。
老麺師とは何か?
老麺師とは何かというと、「水と小麦だけを原料に、自然発酵させた自家製酵母(老麺種)を使う中国伝統の製法・老麺を作れる職人のこと」です。
一般的な肉まん、あんまんは、パン同様にイースト菌を使いますが、老麺師は“老麺種”を使います。そのため、通常のものよりやわらかさともっちり感が格段にアップし、独特の優しい風味に仕上がるわけです。
この“老麺種”を維持管理するのは非常に難しく、中国を含む世界中の料理界でも老麺を扱える職人は片手で数えられるほどしかいないのだそうです。そして日本では高野さんただ一人。
高野さんは、中華の名店『赤坂飯店』で修業後、『目黒雅叙園』の料理長となり、そこで老麺を使った数々の点心を提供し、「肉まん」だけで1日数1,000個を売り上げていたのです。
皮がめちゃくちゃ美味しい
これまで、肉まんの美味しさを、外側よりも中身に比重を置いてきた筆者ですが、この『高野』の老麺式肉饅を食べて、皮の美味しさに驚嘆しました。
ふかふか、もちもち、むちむちとした食感。そしてふわ~っと広がる高貴な香り。噛むほどに生地の旨みが押し寄せてくる。
そして、中の餡だって決して負けていません。肉々しいパワフルな肉餡で、噛むとじゅわ~っと肉汁がこぼれ出てきます。醤油や辛子などなくても十分な味わいがあり、皮の美味しさと肉餡の相乗効果で、「まさに求めていた最高峰の肉まんだ!」と、ミスター味っ子のように叫び出したくなるほど。
『高野』の商品は、すべて職人の手作りというだけあって「肉饅」や「あんまん」だけでなく、「肉焼売」「海老焼売」もものすごく美味しかったです。
ちなみに『高野』のある大山は、遊座大山商店街をはじめハッピーロード大山商店街という“食い倒れ商店街”がある街としても有名。ぜひゴールデンウィークの間に、散歩に出かけて、この肉まんをぜひ食べてみてください。ハマること間違いなしですよ。
(取材・文◎土原亜子)
●SHOP INFO
店名:老麺肉まん専門店 高野
住:東京都板橋区大山東町46-6
TEL:03-6912-4137
営:10:30~20:00(なくなり次第終了)
休:無休
http://romen.jp/