【新定番4】美味しく楽しむ秋の旅。

もうすぐ訪れる、食欲&行楽の秋。せっかくならその楽しみ、清冽な空気とともに噛み締めませんか? 自然豊かなデスティネーションをご紹介します。
清らかな海が美味しさの秘密すっきりとした味わいの鯛

東京都の島嶼部(とうしょぶ)・伊豆諸島に浮かぶ、外周約12kmの小さな島・式根島。コーラルブルーの海では海水浴やダイビング、島内ではキャンプも楽しめると、ツウな観光客に評判の島だ。くわえて来訪者を唸らせているのが、式根島養殖場で手間暇かけて育てられる真鯛「式根鯛平君」の存在である。

式根鯛平君の美味しさの秘密に、まず“環境”がある。式根島は太平洋に面するために、島の周りに常にきれいな海水が循環する。くわえて、生け簀の中の魚の数に余裕を持たせることで、ストレスのない生育環境をキープ。また養殖の“餌”に選ぶのは、サバなどの「生エサ」ではなく、バランスのいい飼料だ。こうすることで、身の“臭み”や“脂ののり過ぎ”が避けられる。発育した式根鯛平君は、餌抜き、神経〆などを施して出荷。臭みのない身質は刺身やしゃぶしゃぶに最適で、カルパッチョや蕪蒸しでも提供される。

式根島へは東京・竹芝から高速船で2時間半と、案外近い。11月3日~5日は、島の飲食店や宿で鯛が味わえる「真鯛フェア」も開催される。この秋の新たな旅の選択肢として、ぜひおすすめしたい。
東京から船で式根島を目指す

式根島へは、東京・竹芝桟橋から高速船で2時間半(午前に1便)、大型船で10時間(深夜に1便)。また静岡・下田港からフェリーで3時間半だ(午前に1便。水曜を除く)。また新島からも1日3便の連絡船がある。
希少な土佐あかうしの美味しさをシンプルにステーキで味わう

急峻な土地で育まれた“土佐れいほく”の旨いもの
四国のほぼ中央に位置する、「土佐れいほく」と呼ばれる地域。高知県の本山町、土佐町、大豊町、大川村の4町村で構成されるこの地域の人口は約1万1000人に過ぎないが、その分手つかずの自然が残る。険峻な四国山地に抱かれ、四国の水がめ・早明浦(さめうら)ダムや、“四国三郎”の異名を持つ吉野川などを擁する、風光明媚なこの場所。さらに実りも豊かで、米や野菜、「土佐はちきん地鶏」や日本酒の産地としても知られる。

そして今、全国の有名シェフから注目を集めるのが、年間出荷量が約470頭と希少な「土佐あかうし」だ。赤身とサシのバランスがよく、肉の旨味や甘味のもととなるアミノ酸が豊富な肉質。また赤身と脂の美味しさをバランスよく備えた土佐あかうしを堪能するなら、まずは塩で味わう焼肉がおすすめだ。土佐れいほくでは、この土佐あかうしを販売するスーパーもあり、バーベキュー場で味わうことも可能。地元のレストランでは、ステーキなどが楽しめる。

他ではなかなかお目にかかれない、この土佐あかうし。早明浦ダム周辺の紅葉狩りも兼ねて、「土佐れいほく」に赴くのも一興だろう。

「土佐あかうし」の美味しさの秘密は、その生育期間。28ヶ月齢程度までしっかりと肥育することで、グルタミン酸やアラニンなどのアミノ酸が豊富になる。またサシが細かくて脂の融点も低いために、トロける食感だ。
(文◎宮田倫仁、岡野考次)