お酒をつぐ器、お酒を飲む器。酒器に思いを巡らせると、気になってくるあの人のお気に入りや、あのお店のセレクション。酒器を愛でながら一献傾けるのが好きなライターによる酒器折々、酒器こもごも。『酒器も肴のうち』第49献。

前回に続き、東京・蒲田「ささめ」の酒器を拝見する。「ささめ」は日本酒とともに料亭の味が楽しめる小さな佳店。と聞くと敷居が高いのではと思うが、皆の者ビビるでない。店主の山田嘉人さんいわく「居酒屋値段で料亭のごはんが食べられる店」がコンセプト。
お酒のアテにぴったりの一品料理は450円から。定番も日替わりの黒板メニューもそそられるものばかりで、やはり良心的なお値段。提供する日本酒は生酒オンリーで、こちらは500円均一。なんとも懐に優しく、利き酒感覚で気兼ねなくあれこれ楽しめる。
日本酒は常時20種前後揃うが、「常連さんのほとんどはお酒はお任せでとおっしゃいます」と女将の山田ひかるさん。そう話しながらファンシーな猫のぐい飲みを見せてくれ、それと一緒にユニークな箸置きを並べ始めた。

「いつもいらしてくださるお客さまにお店から誕生日プレゼントとして箸置きを用意したんです。猫が好きな方には猫の箸置き、かぼすは大分ご出身の方、貝は貝博士の方とそれぞれのイメージで選びました。
箸置きの次の年はさあどうしようかと考えたとき、猫好きのお客さまが燗酒好きなのもあって、じゃあお猪口にしようかなと思い、選んだのがこれです」
自分用の箸置きやお猪口が用意されているというのは常客の特権ではあるが、なによりお客さまとお店とのフレンドリーな関係が微笑ましい。

「そういえば、錫の酒器で飲んでみたいという方がいらして、それならばと自宅にあったものをお店に持ってきてからはそのままお店用になったものもあります。あとは、おつきあいのある酒販店の方が陶芸をたしなんでいて、頼んだお酒の便に自作のぐい飲みが添えられていたりということも。
お客さまから酒器をいただくことも多く、それぞれ個性があって不思議と被っているのは少ないかも。結果、いろんなものが集まりますが、統一性がない方が選ぶときに楽しいと思っています」

ひときわポップなドット柄のお猪口は雪だるまの徳利とセットでお客さまからのいただきものだそう。赤いお猪口は雪だるまの帽子になっていて可愛らしい。実物はぜひ来店してご覧あれ。
●DATA
「ささめ」
住:東京都大田区西蒲田7-61-8
TEL:03-6331-4003
営:17:00~23:00(日15:00~21:00)
休:月
●NEWS
6月24日(日)に開催される東京・蒲田東口・西口の有志飲食店による日本酒飲み歩きイベント。こだわりの日本酒が揃い、日本酒好きが通う人気店ではしご酒が楽しめる。各店舗には蔵元も参加する。フリードリンク&フリーフード制チケット(前売5,000円、当日6,000円)は絶賛発売中。一部店舗、別途キャッシュオンフードあり。参加蔵元、参加店舗、チケット入手方法など詳細はFacebookでご確認を。
●著者プロフィール
取材・文/笹森ゆうみ
ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。