名店『室町砂場 日本橋本店』の楽しみ方

さて、こちらには蕎麦前が色々ありますが、まずは名物の「あさり」(825円)で一杯というのが、こちらのお店ならでは。上品なダシであさりを炊いた、老舗ならではのしみじみ美味しい一品です。
合わせるお酒は、そば焼酎「那由多の刻」のそば湯割り(770円)。蕎麦そのものを食べる前に、焼酎と蕎麦湯で、蕎麦の香りを存分に楽しみます。

蕎麦前2品目は、珍しい「おかめ吸い」(1540円)。天ぷらそばから蕎麦を抜いたものを「抜き(室町砂場では「天吸い」と呼ぶ)」と呼びますが、こちらはおかめそばから蕎麦を抜いたもの。

かまぼこに海老、玉子焼きなど具沢山であれこれつまめるのが楽しい。器の底には海苔が敷いてあって、つゆを吸ってしなっとなった海苔がまた美味しいこと。

そして、なんと秋シーズン限定で、しいたけの代わりに松茸が入っているという、嬉しいサプライズが!
蕎麦前の後は2種類のおそばをたぐる

おそば1枚目は「別製ざる」(990円)。
ざるなのに海苔がかかってないと思うかもしれませんが、室町砂場ではそばの芯だけを挽いた更科粉を卵でつないだものを「ざる」、挽きぐるみ粉等のそば粉を二八の割合でつないだものを「もり」として、2種類のお蕎麦を出しているんです。

江戸前の濃いめのつゆをちょこっとつけて、真っ白の蕎麦を粋に楽しむ。更科特有のつるっとした喉越しと、歯で噛み切る時のパツンとした歯応えが絶妙です。
2枚目は室町砂場が発祥の「天もり」(2200円)。

暑い夏でも天ぷらそばを楽しめるようにと考案されたのが、天ぷらの入った温かいつゆと、冷たいそばの組み合わせ。
二八でカドがしっかり立った蕎麦は、まさに東京を代表する味。

エビや貝柱の旨みがつゆに溶け出し、天ぷらのごま油でコクが加わったつゆも、ざるそばのつゆとはまた違う味わいなので、ぜひとも両方頼んでほしい。

こちらの日本橋本店と赤坂店で、今までこのお蕎麦を何枚食べてきたことか。食べ盛りの頃は「量が少ない」なんて思ったこともありましたが、お酒と蕎麦前を嗜むようになってからは、むしろこの量が〆にちょうどいい。
明治から続く名店で、蕎麦の魅力をしっかり堪能しました。
●著者プロフィール
小宮山雄飛
ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンの傍ら、グルメ番長として食のシーンでも活躍し、様々な雑誌やWEBサイトでの連載、レシピ開発なども行う。著書には『旨い!家カレー』『レモンライス レシピ』『小宮山雄飛 今日もひとり酒場』など。テレビ、ラジオ番組の出演なども多数。






