
関税問題が連日ニュースを賑わせる中、2019年にEUと締結されたEPA(経済連携協定)により日欧の貿易は増加の一途を辿っています。筆者もスーパーやデパ地下などに並べられたヨーロッパの食材を見て、実感する機会が増えました。
このムーブメントをさらに後押ししようとEU諸国のビジネス使節団が来日。先日、東京の帝国ホテルにて交流会が開かれたのでその模様をお伝えします。

6月のとある平日、日欧問わず多くのビジネスマンや関係者などで会場は大賑わい。聞けば、22カ国にも及ぶ企業や団体が数多く参加しているとのこと。
会場入口脇には、オリーブオイルやワイン、加工食品や調味料などEU各国の代表的な食材が陳列されています。中にはあまり馴染みのない国のものもあり興味津々です。

まずクリストフ・ハンセン欧州委員会農業・食品コミッショナーが登壇。EUと日本は持続可能性をはじめさまざまな価値観を共有しあえる大切なパートナーであることを強調。今後のさらなる連携に期待を滲ませていました。続いて登壇した滝波宏文農林水産副大臣もEUとの連携の重要性などを説き、交流会がスタートしました。

各テーブルではさっそく商談や情報交換などが行われ盛り上がりを見せています。そんな中、美しく盛り付けられた料理やワインなどのお酒がコース仕立てでテーブルに供されました。
用意されていたお酒は、スペインのカバ(スパークリングワイン)やルーマニア・フシ産のロゼワイン、ブルガリア・ドナウ平原産の赤ワインなど。本場のワインと料理とのマリアージュはいかに? とさっそくご相伴に預かります。

料理はEUの食材を中心に、日本の食材をアクセントに使ったり、日本の料理法を取り入れたものなどもあり、さまざまな趣向が凝らされています。「ヨーロッパ食材と日本食材のマッチング」をテーマとしているEUならではのまさに粋なはからいです。皆さん、極上のワインと料理に舌鼓を打ちながら、それぞれ活発なコミュニケーションを取っているのがわかります。そこで気になった企業や団体の代表者3組に、来日の目的や日本市場への期待など話を伺ってみることに。
22カ国にも及ぶ企業や団体が数多く参加。その目的を訊いてみた!
■Super Garden・CEO Laura Kaziukonieneさん(リトアニア)

「私はフリーズドライ技術を活用した商品を開発・製造するSuper Gardenという会社のCEOです。ヨーロッパの宇宙関連企業やNASAに商品を提供していますが、一方で一般消費者向けの商品にも力を入れています。
例えば画期的なのが1cm大のキューブ状に栄養素を詰め込んだフリーズドライ食品。元々、子どもにも野菜を食べやすくするために開発した商品で、有機栽培で採れたイチゴをはじめ、さまざまなフルーツや野菜を凝縮し使用することで、美味しくしかも手軽に多くの栄養素を摂取することができます。また主力商品である溶けないアイスクリームは、ヨーロッパにある多くのスーパーなどで販売されています。
フリーズドライという分野ではリーディングカンパニーであることを自負していますが、今回、市場参入を模索するために来日しました。ぜひ日本の消費者の方々にもフリーズドライ商品を味わってほしいです!」
■Central Union of Agricultural Producers and Forest Owners of Finland (MTK) ・農業部門ディレクター Johan Abergさん(フィンランド)

「MTKは農業生産者や森林所有者、起業家などを支援するフィンランドを代表する組合団体です。フィンランドでは農業従事者が会社として農業経営を行うケースも多く、企業のオーナーでもあります。現在、約32 万人の組合メンバーが所属し、穀物やオイルシード、牛や豚の畜産などさまざまな食材を生産しています。
来日の目的は、日本での市場ニーズを把握して母国に持ち帰り、日本の企業などと潤滑に取引ができるようマッチングを図ること。フィンランドのプロダクトデザインは日本でもよく知られていますし、最近ではフィンランド式サウナやなども人気だと聞いています。
我々は栄養価が高く注目されているオーツなどをはじめ、フィンランドの食文化もより知ってほしいと考えているのです。EPA締結から6年。最近は牛肉や鶏肉などの取引も始まり、両国の関係もさらに広がりを見せています。フィンランドの貿易アンバサダーとしてムーミンが活躍していますが、今後もムーミンを通して、さまざまな交流を深めていければと思います」
■CMA France・ミッションマネージャー Anne Rjasanowskiさん(フランス)

「フランスでは、食品や飲料、建設、製造サービスなど職人によるものづくりが活発です。我々は、フランス全土で130万を超えるクラフト事業者を擁するフランス職人組合と協会ネットワークを代表する組織。海外への展開をはじめ、クラフト事業の発展や競争力、持続可能性を促進することを目的にさまざまな支援を行っています。
例えば食材であれば、チョコレートなどのお菓子やオリーブオイル、お酒をはじめ多様な商品が作られていますが、その多くが家族経営で、地域に根ざした伝統的なビジネスとして続けられています。
これら小規模ビジネスでの海外での試験的展開をサポートすることによって、こうした企業の輸出拡大やビジネス成長に繋げられればと思い来日しました。日本もそうですがフランスも伝統的なものづくりをとても大切にする国。日本の皆さまへもそんなクラフト商品をさらに多くお届けできれば嬉しいです」
国や立場こそ違えど、皆さん、日本市場への意気込みや期待感を熱く語っていただきました。

ヨーロッパ食材が身近になったとはいえ、私たちが味わえる食材などはほんのごく一部。日本とEUがさらなる連携を深めることで、食をはじめとした文化交流はもちろん、より多くのヨーロッパ食材を楽しむことができそうですよ!
(文◎編集部 撮影◎上野愛黄)