流行に左右されない“辛口”へのこだわり
麒麟山酒造は、新潟県東蒲原郡の阿賀町にあります。新潟市内からは車で約1時間の山の中に位置し、麒麟山の麓を臨むのどかなエリアです。かつては新潟と会津を結ぶ川港として栄えた場所。冬には2メートルほどの雪が積もるそうです。

同社の代表取締役社長の齋藤俊太郎氏は7代目。麒麟山酒造は1843年創業という長い歴史を持つ酒蔵です。現社長の祖父にあたる五代目・齋藤徳男氏はお酒が大好きな人で、「酒は辛くなくてはいけない」という信念を持っていたそうです。

そのため、戦後から昭和30年代にかけて、甘口で華やかな口当たりの日本酒が流行ったときにも、辛口であり続けることをやめませんでした。1980年代から2000年代前半は辛口な日本酒が人気でしたが、ブーム以前から同社は信念を貫き通す酒造りをしていたのです。
辛口のなかに潜むお米のふくよかな甘み
麒麟山酒造といえば、「カラーボトルシリーズ」と「辛口シリーズ」を中心に展開されており、今回は辛口シリーズを中心に試飲させてもらいました。

「伝統辛口」をベースに作り上げたシリーズで、なかでも「麒麟山 超辛口」は日本酒度+12のキレ味抜群なお酒です。毎日飲んでも飲み飽きないためには、これぐらい辛口であることが必要なのだとわかります。とはいえ、しっかりと日本酒ならではのお米のふくよかさも感じられるので、単に“辛口”なだけではないのが麒麟山酒造のお酒の魅力です。

辛口が主流の麒麟山酒造ですが、「KIRINZAN Kagayaki」は、唯一、果実のような甘みを感じさせるお酒です。口に含んだ瞬間に旨みが広がり、あとから麒麟山らしい酸によるキレの良さが感じられます。こちらは季節限定での販売になっているのですが、“ハレの日”の食事に合わせたくなるような華やかさがあるお酒です。
このKIRINZAN Kagayakiは、2016年の全国酒類鑑評会で金賞を受賞しただけでなく、2013年には全米日本酒歓評会で銀賞を受賞しています。日本だけでなく、世界が認める銘柄なんですね。