「まめ」の苺大福(外苑前)【第9回 小みやげネタ帖】

差し入れ以上、贈り物未満、アンダー1,500円のささやかな手みやげを“小みやげ(こみやげ)”と勝手に命名。気の置けない友人に、ちょっとしたお礼に。おいしくて財布に優しいうえに、もらった側もお返しいらずの気楽なアイテム。関西出身ライターが日常遣いする、テッパンの東京みやげをご紹介します。

春香る、センセーショナルな
“苺大福体験”

11月下旬~4月中旬限定の苺大福は330円。鼻に舌に、春がかけ抜ける。
11月下旬~4月中旬限定の苺大福は330円。鼻に舌に、春がかけ抜ける。|食楽web

「“苺の人”が多いから、毎年3月から4月中旬は、もうほんまにてんてこ舞いなんですよ」。

 そう言いながら大福をせっせとまるめるのは、京都生まれの大八木惠子さん。店奥の小さな工房では、朝5時から餅米を蒸したりあんを煮たりと目が回る忙しさだ。

 外苑前の路地裏に佇む和菓子処「まめ」が、1年で最も多忙を極める春。11月下旬から4月中旬まで販売される苺大福を求めて、開店前からファンが行列をなす。

 皆のお目当て、スペシャルなオーラを放つ苺大福はご褒美度満点。香りも甘さも濃くてジューシーな特大の苺、上品な味わいのこし餡、柔らかな求肥が三位一体となって、口内は春らんまん。酸味と甘さの絶妙なバランスは、もはやセンセーショナルなおいしさだ。

 ひと口食べれば、いい材料が使われていることも手間暇と愛情が込められていることもよく分かる。主に製菓用に使われることが多い2Lサイズの最高級あまおう、「大福に使ってるところなんて他にないよ」と粉屋さんに驚かれる特選餅粉など、食材を吟味し抜き、店の命であるこし餡も休み返上で丁寧に炊きあげている。聞けば聞くほど、誠実なもの作りがそこここに。心を打つおいしいものにはちゃんと理由があるのだ。

 商用みやげを買いに来たとおぼしきサラリーマンが、「別で苺大福を1個」と最後にぽつり。仕事の合間に食べるのか、それとも待ちきれずにこの後すぐに頬張るのか。先方に渡す時は、きっと誇らしげな顔をしているんだろうな。一度食べれば皆たちまち「苺の人」になる。

 忘れられぬ“苺大福体験”が叶うのは4月中旬まで。売り切れ御免ゆえ早い時間帯にぜひ。

2Lサイズのあまおうを包んだ大福の高さは4.5センチ! 大きいけれどあっという間になくなってしまう。
2Lサイズのあまおうを包んだ大福の高さは4.5センチ! 大きいけれどあっという間になくなってしまう。
作業場で出番を待つ、粉化粧した苺大福たち。立派な苺の頭が求肥から今にも飛び出しそう。
作業場で出番を待つ、粉化粧した苺大福たち。立派な苺の頭が求肥から今にも飛び出しそう。
モダンな店内に並ぶ和菓子たち。派手さはないけれど、ワクワクしたりしみじみしたり、それぞれに確かな個性がある。1個食べたら全制覇したくなるはず。
モダンな店内に並ぶ和菓子たち。派手さはないけれど、ワクワクしたりしみじみしたり、それぞれに確かな個性がある。1個食べたら全制覇したくなるはず。
店頭に貼られた「あまおう 苺大福」の文字に、通りすがりの人も目を輝かせる。苺大福好きは男女問わずこの世に多いのだ。
店頭に貼られた「あまおう 苺大福」の文字に、通りすがりの人も目を輝かせる。苺大福好きは男女問わずこの世に多いのだ。

●SHOP INFO

店名:まめ

住:東京都港区南青山3-3-18
TEL:03-3479-2588
営:10:00~18:30(売り切れ仕舞い)
休:日、月、火曜(夏期休業あり)
日持ち:当日中(わらび餅と豆大福は翌日)
地方発送:不可
ほかに購入できる店:なし
http://mamemame.info/

●著者プロフィール

森本亮子

編集・ライター。『東京の手みやげ』(京阪神エルマガジン社)など、手みやげ関連のムック・書籍や雑誌企画を多く手がける。レストランや酒場、肉などの食をメインに、おいしいものと街と人をこよなく愛する関西人。錦糸町在住。