「志むら」の福餅と日吉団子(目白)【第3回 小みやげネタ帖】

差し入れ以上、贈り物未満、アンダー1,500円のささやかな手みやげを“小みやげ(こみやげ)”と勝手に命名。気の置けない友人に、ちょっとしたお礼に。おいしくて財布に優しいうえに、もらった側もお返しいらずの気楽なアイテム。関西出身ライターが日常遣いする、テッパンの東京みやげをご紹介します。

午前中に売り切れることも多い
お茶請けの名コンビ

福餅、日吉団子は各1個151円、写真の10個箱入りで1,512円。人気なので予約が確実(1個から受付)。
福餅、日吉団子は各1個151円、写真の10個箱入りで1,512円。人気なので予約が確実(1個から受付)。 | 食楽web

 “小みやげ”連載、今回は番外篇をお届け。看板商品の影でひそかに人気の裏番長的小みやげをフィーチャー。

 77年にわたって裏番(うらばん)を張る名コンビが目白にいる。昭和14年創業の「志むら」といえば、目白銘菓として名高い「九十九餅」(つくももち)が有名だ。柔らかな求肥に練り込んだ絶妙な硬さの虎豆を、香り豊かな栗きな粉が包み、どこまでも優しい味わい。名物を求め、お歳暮や帰省シーズンには多くの人が店を訪れる。

 また、自家製シロップを使った天然氷のかき氷も評判で、夏には大行列ができるほど。1年を通して提供しており、冬はみかんやかぼちゃなど、和菓子職人が作る季節限定の和シロップも楽しみだ。九十九餅もかき氷も盤石のおいしさなのだが……「福餅」と「日吉団子」を食べずして、真の“志むらラバー”にあらずと思うのだ。

「常連さんは5個ずつ10個のセットをよく買って行かれます」と女将の志村友子さん。福餅は、塩味を効かせた青エンドウ豆をつきたての餅に混ぜてのし、こし餡を包んだ俵型の餅菓子。弾力が心地良いすべすべの餅と硬めに炊かれた青エンドウ豆、みずみずしく繊細なこし餡のバランスが素晴らしく、絶妙な塩加減が粋な雰囲気だ。

 対して日吉団子は、こってり甘い餡ともちっと香り高いよもぎ餅が“甘い幸せ”を運んでくれるほっこり系。福餅と日吉団子とでは餡のレシピを変えており、甘さも味わいも余韻も全く違う。カジュアルなお菓子でも手を抜かない精神に“志むら愛”がいっそう深まる。昭和14年の創業以来、根強い支持を集めてきた2つの裏番。九十九餅が少しよそゆき顔した贈答品なら、福餅と日吉団子は普段のお茶請けといったところだろうか。

 時間が経つと餅が硬くなるため、日持ちは当日限り。でも一度食べたら大切な人にも味わってほしいと思う、しみじみ優しいお茶請けの名コンビ。目白まで足を運ぶ価値は充分だ。

福餅は塩気が餡の楚々とした甘さを引き立てる。もちもち柔らか、ああこんな枕で眠りたい。こし餡もよもぎ餅もきちんと甘い日吉団子は濃い煎茶がぴったり。どちらも山の手らしい上品なサイズ。
福餅は塩気が餡の楚々とした甘さを引き立てる。もちもち柔らか、ああこんな枕で眠りたい。こし餡もよもぎ餅もきちんと甘い日吉団子は濃い煎茶がぴったり。どちらも山の手らしい上品なサイズ。
目白っ子は知らなきゃモグリ、看板の九十九餅10個入り1,404円。日持ちが3日間なのもありがたい。
目白っ子は知らなきゃモグリ、看板の九十九餅10個入り1,404円。日持ちが3日間なのもありがたい。
目白通りに面した明るい店内では、お上品なマダムたちが“いつもの和菓子”を買ってゆく。
目白通りに面した明るい店内では、お上品なマダムたちが“いつもの和菓子”を買ってゆく。
目白は学習院大学などを擁する学生街でもある。女子大生にかつての乙女たち、甘党紳士など顔ぶれは実に様々。
目白は学習院大学などを擁する学生街でもある。女子大生にかつての乙女たち、甘党紳士など顔ぶれは実に様々。

●SHOP INFO

店名:志むら

住:東京都豊島区目白3-13-3
TEL:03-3953-3388
営:9:00~19:00(祝日は~18:00、喫茶は10:00~、LOは閉店30分前)
休:日 ※年始は1月4日から営業。2.3階の喫茶は改装工事中、2月中旬から営業再開予定。
日持ち:福餅、日吉団子、赤飯は当日中、九十九餅は3日
地方発送:一部可(※九十九餅は可)
ほかに購入できる店:なし
※福餅と日吉団子、一部の商品は1月10日から販売。

●著者プロフィール

森本亮子

編集・ライター。『東京の手みやげ』(京阪神エルマガジン社)など、手みやげ関連のムック・書籍や雑誌企画を多く手がける。レストランや酒場、肉などの食をメインに、おいしいものと街と人をこよなく愛する関西人。錦糸町在住。