「サウスアベニュー」のジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】

気の置けない友人に、ちょっとしたお礼に。おいしくて財布に優しいうえに、お返しの気遣いいらず。差し入れ以上、贈り物未満のささやかな手みやげを“小みやげ(こみやげ)”と勝手に命名。関西出身ライターが日常遣いする、テッパンの東京みやげをご紹介します。

目からうろこのおいしさ続々!
西荻発・最高級ジャスミン茶

「サウスアベニュー」のオーガニックジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】
食楽web

「おもしろい中国茶の店が西荻にあるよ」

 友人にそう教えてもらったのがきっかけだった。そして店で飲ませてもらった最高級ジャスミン茶は、「えーっ、中国茶ってこんなにおいしいの!?」と驚きの連続。ふわりと豊かな香りがたちのぼり、圧倒的な華やかさと洗練された味わい。ひと口ごとに香りも味も刻々と変化してゆき、まるで茶葉が生きているみたいだ。最後の一滴まで大切に味わった後、空になった茶器からも甘~い香り。ああ、至福。近所の中国料理店で飲んでいるいつものジャスミン茶とはまったくの別物じゃないか。未知の扉がギギギ……と開く音がした。

 30種のジャスミン茶を筆頭に、烏龍茶、緑茶、白茶、黒茶、薬膳茶など、約40種の中国茶が並ぶ「サウスアベニュー」。どれも手摘みの新茶のみでつくられる最高級品だ。

 オーナーの岩崎悦子さんと安那美香さんが中国茶のとてつもなく奥深い世界にハマったのは、1999年のこと。「本当においしい中国茶を広めたい」と翌年には店を開き、以来、毎年新茶の時期には本場・福建省福州市や雲南省の山奥にまで足を運び、お茶を仕入れてきた。ずいぶん増えたオリジナルの茶葉は、長年の信頼関係の賜物だ。

 イチオシは、冒頭のキング・オブ・ジャスミン茶“針王”、とろりとしつつ後味さっぱりの“珍珠王”、フレッシュで若々しい“小針”の3種が少しずつ味わえる飲み比べセット。中国茶を知る一歩であり、1,296円という値段がすごい。「中国で7倍の値がするよ」。あまりに良心的な値付けに、現地の農家のおじさんたちは目を丸くするそうだ。

「儲けは少ないけど、中国茶の本当のおいしさを知ってもらえるなら、それでいい」。茶葉と農家さんへの二人の真摯な思いが、ピュアな味わいのお茶からひしひしと伝わってくる。

 現地の写真を温かな言葉とともに綴ったアルバムに映るのは、めまぐるしく発展する中国とはうってかわって、山村ののどかな暮らしぶり。「こんな場所でこんな人たちがつくっているんだ」。店に余裕がある時はアルバムをめくりながら試飲することもできる。

 丁寧にお茶を淹れ、楽しむ。豊かなひとときに心がほぐされていく。1杯で4~5煎楽しめるお得な感じも、ちょっとうれしい。目からうろこの中国茶体験、ぜひ一度お試しあれ。

「サウスアベニュー」のオーガニックジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】
針王、珍珠王、小針の3種が5gずつ入った最高級ジャスミン茶のみくらべセット1,296円。茶葉ごとに香りも味も異なる、奥深き世界。
「サウスアベニュー」のオーガニックジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】
余裕がある時には試飲させてもらえることも。産地や効能、淹れ方など丁寧に教えてくれる。
「サウスアベニュー」のジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】
中国茶といえど、ジャスミン、烏龍、緑茶、紅茶、白茶など実にさまざま。ジャスミン茶25g1,720円~。
「サウスアベニュー」のオーガニックジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】
新茶の時期を迎える夏、福建省福州まで買い付けに赴く。オーナー二人の茶葉愛がひしひし、バーチャル旅気分を味わえるアルバムは10冊近くになった。
「サウスアベニュー」のオーガニックジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】
ゆるやかな時間が流れる店内には、地元はもちろん遠方からも熱烈ファンが足を運ぶ。女子率は高いが、常連紳士もいらっしゃるので男性もご安心あれ。
「サウスアベニュー」のオーガニックジャスミン茶(西荻窪)【1】【第5回 小みやげネタ帖】
なつめとオーガニックくるみと干しぶどうのサンド(1個324円)やチョコレートなど、お茶菓子もいろいろ。お三時セットにするのも気が利いている。

●SHOP INFO

店名:サウスアベニュー

住:東京都杉並区西荻南3-22-6-102
TEL:03-3334-3768
営:14:00~20:00
休:木曜(新茶の仕入れのため春&夏期休業あり)
日持ち:1年ほど
地方発送:可
ほかに購入できる店:恵文社一乗寺店、kit(共に京都)
https://www.southavenue.info/

●著者プロフィール

森本亮子

編集・ライター。『東京の手みやげ』(京阪神エルマガジン社)など、手みやげ関連のムック・書籍や雑誌企画を多く手がける。レストランや酒場、肉などの食をメインに、おいしいものと街と人をこよなく愛する関西人。錦糸町在住。