歴史を馳せながら味わう「安宅乃関所寿司」の味わい深さ

創業は1939(昭和14)年、90年近くの歴史を誇る『割烹・鮨 米八(よねはち)』。元は精進料理のお店だったそうですが、たちまちお寿司が評判に。
「当時、『米八のお寿司が美味しいんだよ』と評判が出ましたそうでしてね。昭和38年頃にこの地に来て、内装を変えて、お寿司を出したら本当によく流行ったんですよ」
そう楽しげな様子で話してくれるのは、大女将の浮田君江さん。

総檜で造った能舞台を模したカウンター席は当時、初代が設計。檜舞台とよくいいますが、板場は板前の最高の舞台であると、檜舞台と檜のカウンターを作ったそう。
「なんで赤い壁にしたの? とおじいちゃんに聞いたら、大事なお客様をお入れするところは朱色、次のお客様は紫色、廊下などはグリーン色、天井はダイヤモンドカット。これは成巽閣の内装を模して取り入れたんだそうなんです」
*成巽閣=加賀・前田家の奥方御殿

そんな米八を支えてきたのが、「安宅乃関所寿司」です。
木曽路を旅した源 義経一行に旅中の糧として持たせた安宅関所超えの押し寿司を、家伝の秘法で仕上げたもの。勧進帳の巻物になぞらえた竹の皮に包まれ、鯖、紅鮭、エビ、ささご鯛を使って棒状に仕上げた姿は、なんとも優雅で風格さえ感じます。
6切れに分かれていますが、一切れが2切れ分ほどある昔ながらの製法。
シャリは地元産の特別栽培米コシヒカリ「蛍米」を使用。酢飯の上には、近隣で獲れた鮮魚を締め、食べ頃まで熟成させたネタなど昔から変わらぬネタがのっています。その酢飯とネタの上品な風味は、口にじんわりと広がり、大きいながらも手が止まらぬおいしさ。
![[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/12/20251221-yonehachi06.jpg)
「なんとも上品な味ですね!」と君江さんに伝えると、「あら、嬉しい〜。おいしいでしょう?」とさらに笑顔いっぱいに。
ちなみに、様々な販売所で君江さんが店頭に立つと、すぐに完売してしまうんだとか。「だってほら、口がたつから(笑)」。その佇まいに、地元の伝統とあたたかな人情を感じずにはいられません。
「安宅乃関所寿司」は小松駅や小松空港、お店の店頭などで販売しています。48時間日持ちするので、道中の駅弁&空弁として、お土産として、ぜひ味わってみてください。
なお現在、『割烹・鮨 米八』は若女将兼板前の浮田 彩さんが切り盛りしており、絶品のお寿司のコースや旬の食材を使ったアラカルトメニューなどが楽しめます。次回は地元の海の幸と人情を感じにまた来訪したくなる良店です。

(撮影・文◎編集部)
●SHOP INFO
割烹・鮨 米八
住:石川県小松市松任町58
TEL:0761-24-1717
営:11:30〜14:00、17:30 〜21:00
休:月曜
https://sushi-yonehachi.jp/





