「イギリス料理=マズい」説は本当か? 英国料理の専門店で調査してみた

「イギリス料理=マズい」説は本当か? 英国料理の専門店で調査してみた
食楽web

●調査内容:よく聞く「イギリス料理=マズい」説の理由と、最新のイギリス料理事情を専門店『THE R.C. ARMS』で聞いてきた

 コロナ禍で長らく制限されていた海外旅行の規制も緩和され、少しずつ海外旅行に行く人も増えてきました。海外旅行の楽しみの一つといえば「食」です。「アメリカで本場のハンバーガーを食べたい!」「スペインでパエリアを食べたい!」など、考えるだけでもワクワクしますが、イギリスに関しては「イギリス料理は不味い」「イギリスに行っても美味しいものは食べられない」なんていうヒドい説を耳にします。

 しかし、果たして本当にそうなのでしょうか? その説を検証すべく、イギリスの伝統食文化を楽しめるブリティッシュパブ&レストラン『THE R.C. ARMS』の担当者に話を聞いてみました。

痩せた土壌、冷涼な気候……独自の進化を遂げたイギリスの食文化

お話を聞いた『THE R.C. ARMS 有楽町店』
お話を聞いた『THE R.C. ARMS 有楽町店』

 今回この説を検証するために東京・有楽町『THE R.C. ARMS』に行きました。同店はもともとイギリスのパブ文化を日本に広めるべく1999年に新橋にオープンしたヴィクトリアンパブ『THE ROSE&DROWN』を前身とし、昨年11月に『THE R.C. ARMS 有楽町店』として生まれ変わったお店です。イギリスの伝統を引き継ぎつつ今のフードシーンも楽しめるこちらのお店に、イギリス料理の定説の真偽を聞いてみました。

 まず、食文化の成り立ちにはその国の気候などの地理条件が大きく影響していると考えられていますが、イギリスはどのようなものだったのでしょうか。

「イギリスはもともと土壌が豊かとは言えず、気候も冷涼でした。そのため食物の種類が少なく、調理方法も手間をかけないものが多くなりました。焼くだけ、煮るだけ、揚げるだけといったシンプルな調理法で、味付けもされていないことも多く、フィッシュ&チップスにビネガーや塩が添えられているのもこのためと言われています」(THE R.C. ARMS 有楽町店・担当者)

 痩せた土地でも育てやすかった野菜の一つが、じゃがいもです。このため、フィッシュ&チップスをはじめ、マッシュポテトやハッシュドポテトなど、じゃがいもが主食のようになっているのだそうです。

「イギリスはインドを植民地にしていた関係で、18世紀頃からスパイスや米をイギリス国内に持ち帰り、ライスカレーが広まったと言われています。イメージが無いかもしれませんが、ロンドンの街を歩くとインドカレーレストランの多さにきっとびっくりされますよ! さらに、ロンドンは金融の街でもあるので、世界中から様々な人種が集まり、近年では中華料理はもちろん、アジア各国の料理、中東の料理なども取り込まれ、独特なミックスカルチャーに発展しています。

 日曜日に家族で教会に出かける前に、オーブンに肉の塊を入れ、帰宅したら焼き上がった肉をみんなで食べる“サンデーロースト”という文化も伝統的です。日本でも人気のローストビーフは、実はこれにあたります。肉の塊を焼いて食べるというのは元々貴族の文化だったのですが、同じように貴族文化から生まれたものが、アフターヌーンティーです」(THE R.C. ARMS 有楽町店・担当者)

 今や“ヌン活”として女性の間で人気のアフターヌーンティーも、実は「不味い」と言われているイギリス料理が発祥というのは正直不思議な感覚でした。イギリス料理、実は日本人の舌に合うのではないでしょうか?

「イギリス料理=マズい」という先入観はもう古い! 最新イギリス料理を食べてみる

イギリスの最新のフードシーンを反映させたメニュー
イギリスの最新のフードシーンを反映させたメニュー

 食の面では恵まれた風土ではなかった一方で、歴史とともに進化を続けてきたイギリスの食文化。2006年にはロンドン西郊の『ファットダック』というお店が「世界ベストレストラン50」で1位に輝き、他にもイギリス国内の4店舗がトップ10にランクインするなどの快挙を成し遂げました。2012年のロンドンオリンピックでもイギリスは美食国家のPRに力を入れ、美食大国としての評価も集まり、「イギリス料理=マズい」という先入観はすでに過去のものでもあるようです。

『THE R.C. ARMS』では伝統料理はもちろん、先述したミックスカルチャーを反映した今のフードシーンのトレンドも楽しめるということで、実際にいただいてみました。

「R.C.スタイル フィッシュ&チップス」600円(税込)
「R.C.スタイル フィッシュ&チップス」600円(税込)

 まずは、イギリス料理の代名詞とも言える「フィッシュ&チップス」から。魚とジャガイモが別々に揚げられているのが一般的ですが、なんと『THE R.C. ARMS』ではオリジナルスタイルとしてタラに細長く切ったじゃがいもを巻き付けて揚げて提供しています。

 サクッとしたじゃがいもの奥に、タラのほくほく感を感じられます。一緒に揚げることでじゃがいもが衣のようになり、タラが蒸され非常に柔らかく仕上がっています。タルタルソースはピクルスがアクセントになっていて、ソースの酸味でさっぱりといただけます。素材の旨みがきちんとあり、ビネガーや塩を足さなくても美味しくいただけました。サクサク感とほっくり感、どちらも一度に楽しめ、食べ応えもあるメニューです。

「ラムチョップグリル ミントチミチュリソース」2500円(税込)
「ラムチョップグリル ミントチミチュリソース」2500円(税込)

 続いては“サンデーロースト”文化を楽しめるメイン料理。こんがり焼かれたラム肉にミント入りのソースがかかった見た目にもインパクトのある一品です。ラム肉にミント!? と意外な組み合わせですが、肉との相性の良さに驚きです。

 爽やかなミントの香りが肉の臭みやクセを消し、さっぱりと食べられます。ソースは玉ねぎやにんにくがたっぷり使われており、ワインビネガーの酸味で食欲を刺激する味わいです。付け合わせはもちろんマッシュポテト。とてもクリーミーで、肉汁やソースの味わいを引き立てています。「チミチュリソース」自体はアルゼンチンが発祥のようで、イギリスならではのミックスカルチャーを感じられるメニューです。

「キャラメルバターアップルパイ」1000円(税込)
「キャラメルバターアップルパイ」1000円(税込)

 キャラメルバターでコンポートしたリンゴをサクサクのパイ生地で包んで焼いた名物メニュー。注文が入ってから焼き上げるので、サクサクのパイ生地を楽しむことができます。アツアツのパイに添えられたバニラアイスは、バニラの風味もしっかり感じられ、クリーミーなひやあつ食感を楽しめます。レモンソースと一緒にいただくと非常にさっぱりして、お口直しにも良いです。濃厚なのにくどくない味わいであっという間に完食してしまいました。お腹がいっぱいでもデザートに必ず注文したくなるメニューです。

調査結果:「イギリス料理=マズい」説はかつての誤解で、今日では負のイメージを覆すほどの絶品料理ばかりだった!

まるでイギリスに来たかのような雰囲気を楽しめる店内(食楽web)
まるでイギリスに来たかのような雰囲気を楽しめる店内(食楽web)

 イギリス料理の負のイメージを覆すほどの、絶品料理ばかりをいただける『THE R.C. ARMS』。イギリスの伝統と今のミックスカルチャーをバランスよく組み合わせたメニューが特徴で、シェパーズパイ、スコーンや、マサラパパド、フムスなども楽しめます。ブリティッシュパブ&レストランということで、料理だけでなくドリンクも非常に豊富に揃っているのも魅力です。

「イギリス料理=マズい」は過去のものであり、伝統を尊重しつつ様々なカルチャーと融合しながら進化を遂げています。今回お邪魔した『THE R.C. ARMS』は、絶品で最新のイギリス料理をいただけました。是非ともイギリス料理のイメージをアップデートしてみてはいかがでしょうか。

(撮影・文◎長岡ユミ・松田義人)

●SHOP INFO

店名:THE R.C. ARMS 有楽町店

住:東京都千代田区有楽町1丁目7-1 有楽町電気ビルヂング北館1F
TEL:03-3214-7920
営:月~土、祝前日11:30~23:00(フードL.O. 22:00、ドリンクL.O. 22:30)日祝11:30~22:00(フードL.O. 21:00、ドリンクL.O. 21:30)
休:なし
https://rc-arms-gate.jp/