ボリューム満点! 老舗喫茶店の横手焼きそばの旨さの秘密とは?

『ふじた』の「横手焼きそば」は、前述した横手やきそばの定義に沿ったオーソドックスな一皿です。しかし、他のお店と異なるのがそのボリューム。写真は普通盛りですが、他店なら大盛り扱いになりそうな量です。また、目玉焼きが2個ものっているのも、他店にはないサービス。しかも味噌汁とサラダも無料で提供してくれます。地元の人から、「『ふじた』は安くてウマくて満腹になれる」と聞いていましたが、これは間違いないハズ! 男性なら中盛り、大盛りもオススメだそうですが、普通盛りでもしっかりボリューミーです。

それでは早速いただきます! 柔らかめのもっちりした麺に、ウスターソースと卵の黄身がしっかりからんで優しい美味しさです。目玉焼きに隠れていましたが、野菜もたっぷり! 他店と比べて明らかに多い。野菜のザクザクとした食感が麺との相性バツグン、かつ挽肉もしっかり入っているので、食べ応えもバッチリです。

「味が薄かったらソースかけてくださいね。ウスターソースもありますが、とんかつソースも美味しいですよ」と女将さん。それならば、と半分ほど食べすすんだところで、2個目の卵にとんかつソースをたらして味変。これがまたウマい!
ウスターソースだと少し水っぽくなりますが、とんかつソースなら濃厚な味のまま楽しめます。しかも卵がダブルなので、最後まで黄身と絡めながら食べられるのも嬉しいところ。

女将さんによれば、「女性は普通盛り、男性は中盛り、大盛りを頼まれることが多い」とのこと。お皿が一回り大きくなるごとに50円ずつ料金が上がりますが、50円とは思えないほどボリュームアップします。ちなみに個人的な体感ですが、牛丼チェーン店の並盛りで満足できる人は普通盛りでちゃんとお腹いっぱいになれると思います。
盛りの良さとサービスの良さは、女将さんの「来てくれる人に喜んでもらいたい」という気持ちから来ているのだとか。

「利益より何より、お客さんが喜んでもらえることが嬉しいんです」と笑顔で語る女将さん。創業から盛りの良さで評判のお店だったそうですが、サービスで味噌汁やサラダをつけ始めたのは2005年の横手市合併頃から。(※お店のある平鹿町はもともとは横手市ではありませんでしたが、合併後に横手市に)
「合併した辺りから市内ではチェーン店が増えて景気も悪くなり始めて。時代と共に人も街並みも変わっていきました。そんな中でも、“焼きそばといえばふじた”と通ってくれるお客さんがいることが本当に嬉しかったんです。感謝の気持ちを少しでもお客さんに還元したくて、今のサービスになりました」

真心あふれる接客とサービスには、そんな理由があったんですね。コーヒーをいただきながらお話を伺っているうちに、なんだか心まで温まってきます。焼きそばを食べる以外にも、コーヒーを飲みながら女将さんとの会話を楽しみに来店される常連さんもいるとか。その気持ち、わかります。
「ここら辺に住んでる人は、もう昔からの人ばっかりだから。ここを、憩いの場にしたいんです」と女将さん。安い、旨い、盛りが良いが店の目玉かと思いきや、本当の目玉はこの人情味あふれる女将さんに会えることかもしれません。
車でないとアクセスは難しいですが、行く価値は大いにアリ。バスで行く場合は、駅前の横手バスターミナル1番乗り場から『本荘営業所行き』に乗車、『浅舞覚町停留所』で下車すればお店の目の前まで行けます。繁忙期は並ぶこともあるうえ、不定休なので、来店前に電話して確認するのが確実です。また、テイクアウトも可能。秋田在住の人も県外の方も、ぜひ『ふじた』でお腹も心も満腹になってみては?
(撮影・文◎平あきら)