ハマッコ御用達の老舗洋菓子店『浜志”まん』。60年以上愛されているボストン・クリームパイの魅力とは

お店の屋号に物語あり

「浜志”まん」という珍しい屋号は、初代店主が作りあげた「濱志”まん最中」が由来とのこと。

「横浜には甘いもので自慢できる土産物がない。だったら自分が作ろう」という思いから生まれた最中は、昭和初期としては珍しく、横浜で初めて中に栗を入れた豪華な最中で、瞬く間に脚光を浴びたそうです。

 この最中の人気が高じて店そのものが親しみを込めて「浜志”まん」と呼ばれるようになり、いつしかお店の屋号もそのまま「浜志”まん」となったそうです。

時代の変化と洋菓子店への舵切り

魅力的なスイーツが並ぶショーケース
魅力的なスイーツが並ぶショーケース

 その後、『浜志”まん』は外国航路の客船で修業したシェフをパティシエに迎え、1957年(昭和32年)に洋菓子店へと舵を切ります。

 時代は、ちょうど渡航手段が船から飛行機へと変わりつつある頃。客船で働いていた人たちが陸に仕事を求め、横浜には特に日本郵船で活躍した優秀なコックさんたちが多くいたそう。ちなみにこの客船で振る舞われていた洋食は「日本郵船式」と言われ、あのチャーリー・チャップリンもこよなく愛した味なのだとか。

『浜志”まん』が洋菓子店への挑戦を始めることができたのは、ひとえに「日本郵船式」の洋食の技術があってこそだったわけです。

看板商品「ボストン・クリームパイ」

「ボストン・クリームパイ」(ホール3500円)。たっぷりの生クリームがスポンジで挟まれています
「ボストン・クリームパイ」(ホール3500円)。たっぷりの生クリームがスポンジで挟まれています

 今回ご紹介する「浜志”まん」の看板商品「ボストン・クリームパイ」は、もともとはアメリカ・ボストンの老舗ホテル「OMNI Parker’s House」で生まれたケーキです。

“パイ”と言いつつ、実はパイではなく、たっぷりのカスタード・クリームと生クリームを、薄いスポンジで挟んだシンプルなケーキ。

 2種類のクリームがたっぷり詰まっており、コクがありながらもサッパリとした味わいです。クリームだけでなくスポンジそのものがまた美味しく、実は浜志”まんのケーキで最もこだわっているのが、このスポンジの味とのこと。シンプルだからこそ、素材の良さにとことんこだわっているのです。

喫茶コーナーではできたての美味しさが味わえる

繊細なチョコレートの模様が美しい「ミニボストン」580円[食楽web]
繊細なチョコレートの模様が美しい「ミニボストン」580円

 お店では、昔ながらのホールサイズだけでなく、一人用の「ミニボストン」(580円)も販売されています。

 お土産に購入するのも良いのですが、せっかくなら店内の喫茶コーナーで、できたての「ミニボストン」を味わってほしい。飲み物がセットになったケーキセットを1100円で楽しむことができます。

白い丸テーブルと黒の椅子が並ぶ店内は横浜らしくハイカラな雰囲気
白い丸テーブルと黒の椅子が並ぶ店内は横浜らしくハイカラな雰囲気

 そのほか「モンブラン」や「サバラン」など、魅力的なケーキがショーケースにずらりと並んでおり、思わず全種類、買い求めたくなってしまいます。

ケーキを2種類味わえる「ダブルケーキセット」もあります
ケーキを2種類味わえる「ダブルケーキセット」もあります

 ちなみに、「ダブルケーキセット」というメニューもあり、実は喫茶コーナーで一番人気なのだとか。「ミニボストン」にもう一つ好きなケーキをプラスして、心ゆくまで美味しいケーキを味わうのもオススメです。

愛される味の秘訣

お揃いの青いエプロンが横浜のイメージにピッタリ
お揃いの青いエプロンが横浜のイメージにピッタリ

「変わらないように見えて、時代に合わせて少しずつ変化しているのが、ボストン・クリームパイが長年愛されてきた秘訣です」と教えてくれたのは、三代目店主の市村聡史さんと優子さん。

 職人さんの卓越した技術は言うに及ばず、お二人の素敵な笑顔も『浜志”まん』が60年にわたり、横浜で愛され続けてきた理由の一つではないでしょうか。

まとめ

 ハマッコが愛してやまない「ボストン・クリームパイ」は、港町・横浜ならではの歴史を感じることができる逸品です。ぜひ皆さんも味わってみてくださいね。

●SHOP INFO
浜志”まん

住:神奈川県横浜市中区伊勢佐木町5-129
TEL:045-252-4001
営:10:00〜18:00(喫茶は11:00〜16:00)
休:月・火

●著者プロフィール

佐野仁哉

旅好き酒好きのフードアナリスト。ワインエキスパート・WSET Level3・UCCコーヒープロフェッショナルの資格を活かし、日本全国の美味しいものとお酒の組み合わせを日々研究中。