フレンチと中華の融合というだけではない奥深さ

女性のオーナーシェフ、エスター・シャムさんは、香港の三つ星レストラン『ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション』で研鑽を積み、2008年に自身の店『タ・パンテリー』を開店。
その後、2011年にパリに渡り、ミシュラン二つ星の『ルレ・ルイ・トレーズ(13世)』や南仏モンペリエの『ル・ジャルダン・デ・サンス』で修業。

そして香港に戻った後も、『タ・パンテリー』を監修しつつ、2015年4月には現在の『メゾンES』を開店。といった具合に、常に食の研鑽をし続けている人物です。
さて話が長くなりましたが、『メゾンES』のお料理を紹介します。最初に運ばれてきたのはフォカッチャ。

小さなココットに入っていて、カットしてみるとフカフカ。バターの香りが漂っていますが、食べてみると、意外にも中国風のネギ油の風味が広がります。
さらに、ネギ油に加えて、XO醤、沙茶(サーチャー)醤など、中国の調味料が使われているのです。不思議ですが、やみつきになる味わい。
続いてタラバガニを使ったアミューズが登場。パイの器の上にのっているのは、タラバガニと豆腐。そしてパイの器の底はラクサペーストが敷かれており、これまた実にエキゾチックな味わいです。

ラクサといえば、シンガポールやマレーシアでおなじみの麺料理。このラクサの風味がカニの甘みを引き立てています。
続いて登場したホタテの冷菜には、「大辣干蝦辣椒油」(エビのラー油)が使われていたり、はたまた大きなアカザエビ(ランゴスティン)がのったカッペリーニはXO醤で味付けされていたり、「真鯛の松笠焼き」には甜麺醤が……といった具合に、とにかくフレンチと中国料理の融合っぷりがすごいです。

そして筆者がもっとも感動したのは、「和牛リブステーキ 焼きとラグーの食べ比べ」というメインディッシュの肉料理。

和牛のリブステーキは絶妙な火入れで、柔らかく旨味がすごい。そして圧巻は和牛のリブアイで作ったラグー。八角や玉ねぎ、トマト、豆瓣醤とオイスターソースで煮込まれており、噛みしめるたびに旨味がほとばしります。

そして最後のデザートは、「チョコレートムース・ヘーゼルナッツパフェ」。「青花椒油」(青い山椒油)をアクセントに入れているそうで、チョコレートとものすごく相性が良かったです。