04話【コーヒープレス古今東西】『ボダム』のフレンチプレス【2】。

挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

04話【コーヒープレス古今東西】『ボダム』のフレンチプレス【2】。
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 前回に続き、話題の主はデンマーク生まれのキッチンウェアブランド『ボダム』のコーヒープレス。

 そもそも、フレンチプレスという道具自体は非常にシンプルな道具である。挽いたコーヒー豆をガラスのビーカーに入れ、湯を注ぎ、4分待ったらレバーを押し下げる。シンプルだというのは潔い反面、差別化が難しい面があるはずで、実際、前回お伝えしたバラバラに分解して洗えるというのは他社製品でもそうだったりする。

 それでも、なぜボダムにファンが多いのか。ひとつは前回お伝えしたとおり、3層ステンレスフィルターの“目の粗さ”が豆の旨みをちょうどよく引きだす、とプロにも評価されていること。そしてもうひとつは、ライフスタイルに合わせて選べるデザインの充実度ではないだろうか。

 ボダムの代表的なモデルといえば『CHAMBORD』。1950年代にフランスのパリでフレンチプレスコーヒーが広まった当時のムードを想像させるクラシカルなデザインである。街中にあるスターバックス・コーヒーの店頭でも販売されているので、見たことがある人も多いのではないだろうか。そんな定番を筆頭に、フランスで活躍した女性プロダクトデザイナー、アイリーン・グレイの名がついた『EILEEN』。カジュアルな印象の『BRAZIL』、ポップで曲線的なデザインの『KENYA』など、まだまだ種類はたくさん。デザインといっても奇をてらったものではない。どれも美しいが、あくまでシンプルだ。

 現代を生きる我々にとって、機能と美しさを両立したインダストリアルデザインの大切さなんて「あたりまえじゃない?」と言われそうだが、ボダムがその重要性に注目したのは1950年代。家庭用品の輸入卸をしていた同社が初めて開発したオリジナル商品が、サイフォン式のコーヒーメーカー『PEBO』(旧名サントス)。コーヒー抽出の性能はもちろん、発売から約60年経った今も現役で販売されているそのデザインは「お部屋に置きたい…」と妄想が膨らむほど、とてもとてもステキだ。

「1974年に初のフレンチプレス『BISTRO』をリリースしてから様々なフレンチプレスを作ってきたのも、シンプルで美しく、機能的なコーヒーメーカーを作ることがボダムの原点にあるからです」と広報の渡邉麻衣子さん。

 プロにも定評がある、味の安定感。そして好みに合わせて選べる、シンプルで飽きのこないデザイン。もうひとつ書き忘れたが、350ml・500ml・1Lと人数に対応するサイズのバリエーション、という良さもある。

 初めてのコーヒープレス選びは、なかなかに迷うもの。「決められない!」と困ったら、覚えておいて損はない選択肢になるのではないだろうか。

04話【コーヒープレス古今東西】『ボダム』のフレンチプレス【2】。
淹れる量や用途に応じて大きさも様々揃った、ボダムの定番モデル『CHAMBORD』。
インテリアのアクセントになりそうな、モダンなデザインが特徴の『EILEEN』。
インテリアのアクセントになりそうな、モダンなデザインが特徴の『EILEEN』。
04話【コーヒープレス古今東西】『ボダム』のフレンチプレス【2】。
カジュアルなデザインで人気の『BRAZIL』(左)と『BEAN』(右)。
04話【コーヒープレス古今東西】『ボダム』のフレンチプレス【2】。
ボダム初のオリジナル商品であり、初のコーヒーメーカー『PEBO』。丸いビーカーとジャグが連なるユニークな形にファンが多い。

●著者プロフィール

写真・文/木内アキ

北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/