中毒必死! 東京・湯島『ホンカトリー』の“ふりかけ式カレー”とは?

“混ぜ混ぜ食い”が美味しいカレー

カツオとタマリンドのカレー1,000円。
カツオとタマリンドのカレー1,000円。

 では、いざ実食といこう。

 ところで、あなたは、カレーとライスが別に出てきた場合、豪快にライスにカレーをかけてしまう派ですか? それともライスをすくってカレーに浸してちびちび食べてしまう派ですか? 「うるさい」と怒られそうな個人的問題だが、このお店では、ぜひ前者をオススメする。

 カレーをたっぷりライスにかけ、スプーンとフォークを両手に持って、かぼちゃやナスをぶった切り、紫キャベツやしりしりニンジンをばらばらに引き離し、ライスやふりかけと一緒にぐちゃぐちゃと混ぜてしまうこともオススメする。まん丸のヒヨコ豆のファラフェルもメッタメタに破壊してしまっていい。

 滝沢さん曰く「混ぜ混ぜ、攻め攻め食い」にするのがいいのだ。
 バスマティライスとふりかけを混ぜ合わすと、パラパラの米の間に、和風ダシのごとき旨みがまみれ、さらに、ヨーグルトやトマトの酸味が効いたトロトロのカレーがライスを包みこむ。

 口に運べば、ばらまいた紫キャベツの酸味やニンジンの甘み、ヒヨコ豆の優しい味などが、一口ひとくち、それぞれに主張してきて、そのたびに口中が楽しいのだ。「すっぱ、しょっぱ、アマ、辛っ、うま!」ってな、具合に。

 これは、滝沢さんが1つ1つの具材に丁寧に味付けを変えて仕込んでいて、全体を混ぜて合わせた時に、楽しく味わえるようにしているからだ。滝沢さんはこれを「多国籍軍カレーみたいでしょ」と言う。

 具材の個性はバラバラ、複雑な味わいなのだが、サラサラ、スルスル食べさせしまう。気づいたらお皿は空っぽ。だから、またすぐ食べたくなる。明日も来ようと心に誓うのである。

 オープンしたばかりで、なぜ、こんなヤミツキになるカレーを作ることができたのだろうか。

 実は滝沢さんは、開店前、神田で有名なベルギービールの老舗『ブラッセルズ』で仕入れや商品管理などの仕事をしていた人。50歳という節目に会社を辞め、新しいことに挑戦しようとカレー店を開くことを決意。全て独学でカレー作りを始めた。ベルギービールとカレー。何か関係があるのだろうか。

「いえいえ、全然ないです。カレーに関しては、会社を辞めた後、東京の様々な有名店に食べに行ったり、自分なりに本を調べて研究したりしました。だから、諸国の味が入った多国籍カレーになっていると思います。“本格派”を目指しているなんておこがましいことは言えませんが、湯島に似合う、“真面目で手間をかけたカレー”を目指しています。開店後、お客さんの感想を聞きつつ、日々変化をしていて、今のスタイルになったのもここ最近です。ですから、まだまだ変化、進化の途中です」と、実に謙虚なのである。

 実際、ライスの上の具材が増えたのも、1つ1つの具材のセレクトもお客さんとの会話から日々生まれているのだそう。

「店名の『ホンカトリー』は、和歌の技法の“本歌取り”からとったんです。これは先人が作った有名な歌を模して、新しいものに作り出すという技法。つまり、先人がどういう意味でそれを作ったかをよく理解した上で、一部を変更して新しいものに変えていくということ。日本人はそういうのが得意ですし、僕もそうやって、先人たちの作った美味しいカレーを真似しつつ、新しいものを作り出していきたいと思っています」

 今日も十分に美味しい。でもまだまだ進化するという“ふりかけ式カレー”に期待して、明日も食べたいと思うのだった。

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

ホンカトリー CURRY & SPICE

店名:ホンカトリー CURRY & SPICE

住:東京都文京区湯島2-7-9
TEL:非公開
営:11:00~19:00、土11:00~18:00 ※売り切れ次第終了
休:日・祝