全国的に有名な北海道の名物駅弁「いかめし」は函館本線・森駅で食べると10倍おいしい

いかめしは『柴田商店』で通年販売されている

どこか懐かしさを感じさせる「柴田商店」の外観。イートインはなし。買いたての商品を前のベンチで食べることができる
どこか懐かしさを感じさせる「柴田商店」の外観。イートインはなし。買いたての商品を前のベンチで食べることができる

 函館駅から特急で約50分、札幌駅からは約3時間。

 内浦湾を望むJR函館本線・森駅に降り立つと、すぐ目の前に、どこか懐かしい佇まいの2階建ての『柴田商店』があります。「元祖森名物いかめし」は、このお店で通年販売されています。

「元祖森名物いかめし」の包みを開けると、イカと醤油の香ばしい香りがふわりと漂います。人肌の優しい温もりが手に伝わるのは、できたてならではの体験。

 一口食べれば、イカの弾力と米の柔らかさが絶妙に絡み合い、口いっぱいに旨味が広がります。

「元祖森名物いかめし」(990円)。2匹のイカが鎮座。香りと見た目が一貫しているところも魅力的
「元祖森名物いかめし」(990円)。2匹のイカが鎮座。香りと見た目が一貫しているところも魅力的

 食べ終えた後も、醤油とイカの香りが豊かに広がり、北海道の海の風景と見事に調和します。

85年続く伝統の味はこうして生まれた

醤油で味付けされたお米がふんだんに詰まっている
醤油で味付けされたお米がふんだんに詰まっている

 少しややこしいのですが、「元祖森名物いかめし」を販売しているのは『柴田商店』ですが、製造元は同じ森町内の『阿部商店』です。

 実はこのいかめし、戦時中に誕生した歴史ある一品なのです。「阿部商店」のホームページ内にある“いかめし物語”によれば、1941年に初代社長の奥様が、当時、豊漁だったスルメイカを使って元祖森名物「いかめし」を考案した、とあります。最初は、特産品のじゃがいもを詰めるなど試行錯誤した後、米を詰めて今のかたちになったのだそう。

わざわざ『柴田商店』で買うべき理由

森駅からは、内浦湾の海が目の前に広がる
森駅からは、内浦湾の海が目の前に広がる

「元祖森名物いかめし」は、スーパーやデパートの催事はもとより、最近では真空パックなら通販でも買うことができます。しかし筆者としては、ぜひ一度、『柴田商店』で買って食べてみて欲しい。

 理由はいくつかあります。まずは『柴田商店』のレトロな外観と店内のほっこり懐かしい雰囲気。そして何より、海を望む森駅のロケーションが唯一無二。

 いつも乗客で混雑している札幌駅や函館駅に比べると、いたってのんびりした雰囲気の森駅周辺で、海辺の風と空気を感じながら食べるいかめしは、まさに格別なのです。

 なお、北海道新幹線は札幌延伸事業が進んでいますが、森駅には新幹線の駅は設けられない予定。そもそも新幹線延伸後の鉄道(在来線)存続も危ぶまれている状況です。

“JR函館本線・森駅でいかめしを買う”という体験は、今しかできない貴重な旅の記憶になるはずです。

●SHOP INFO
柴田商店
住:北海道茅部郡森町字本町32
TEL:01374-2-2797
営:朝9時から売り切れるまで

阿部商店(製造元)
住:北海道茅部郡森町御幸町112
TEL:01374-2-2256
営:9:00~18:00
休:日曜
https://ikameshi.co.jp/

●著者プロフィール

多田光一

フードアナリスト2級。ジャパンフードセレクション審査員。兵庫県西宮市在住。歴史が好きで、アマチュア講談をしたり、世界遺産マイスターを取得しています。趣味はウェイクボード。