ラグジュアリーな温泉宿『江田島荘』へ

まず驚いたのが、その瀟洒な雰囲気です。『江田島荘』という名称から、和風の温泉宿や民宿を想像していたのですが、海に面する側の窓が広く採られたロビーには、ゆったりとしたソファが設えられて何ともラグジュアリーな雰囲気。リゾートホテルのようで、否応なく気分が高まります。


案内されたソファーでひと息ついていると、ほどなくウェルカムドリンクとスイーツが供されました。スパークリングワインで喉を潤しながら、総支配人である阿部直樹さんに、江田島荘について訊いてみることに。
阿部さんによれば、「江田島荘は“こころと身体が元気になる温泉宿”をテーマに掲げ、客室数32部屋のホテルとして2001年にオープンしました。元々、この場所には温泉入浴施設があり、現在も離れにある『えたじま温泉』でその名残を感じることができます。今年、日本秘湯の会にも正式加盟を果たしました。滞在中は希少な温泉をぜひ楽しんでください」とのこと。

なるほど、エントランスの提灯に思わず納得。次に伺ったのがロビーの至る所に配されているアート作品の数々について。中でも天井から吊り下がっている見事な光柱が気になります。
「江田島はかつて紙布の産地として栄えた経緯もあり、地元の自然や人々とのコミュニケーションから着想を得て創作した、和紙作家・堀木エリ子さんの作品を展示しているんです」
江田島の自然や文化はもちろん、そこに暮らす人々とのつながりを大切にしているという同ホテル。スタッフの約9割が地元出身だというのも頷けます。
江田島ならではの“おもてなし”を心ゆくまで

和洋折衷の客室は、シンプルながら品の良い調度品でまとめられていて、センス抜群。そして何より見事なのが窓から望める瀬戸内海の絶景!
全室オーシャンビューなのもこの宿の特徴なんです。眺めていると敷地内に広がる庭園の先に堤防を発見。そこで夕食前に散策することに。

穏やかな内湾に立地する江田島荘。夕涼みがてら海辺をのんびり散策していると、湾内の至る所で牡蠣棚が設置されているのを目にします。まさに地元ならではの風物詩。気づけば太陽が水平線と島々の間に沈みかけていました。そろそろ夕食の時間です。

前述の和紙作家・堀木エリ子さんの作品である、ロビーからレストラン『locavore(ロカヴォーレ)』へと続く幻想的なアプローチ「アマモの小径」を抜けてテーブルへと着席。
こちらでいただけるのは、“地産地消”の意味が込められた店名の通り、地元の旬食材をふんだんに使用したコース仕立ての料理の数々です。
まずはシャンパーニュ地方、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区の老舗が手がけるシャンパーニュで乾杯。ふくよかな甘みと酸味が絶妙に心地よく、食欲をかき立ててくれます。
そしてアミューズをひと口。地元産ならではのとうもろこしの甘みがじんわりと身体に染み渡る感じで癒やされる味わいです。

この後の前菜や魚料理とのペアリングを楽しむために、白ワインをオーダーすることに。
前菜は県内産のキジハタのカルパッチョです。白身ならではの、あっさりめながらしっかりとした甘みも感じられる味わいがオリーブオイルとマッチ。

付け合せの地元産野菜とあわせていただくとワインがグイグイ進むこと待ったなしです。
続く第2の前菜、アワビと真鯛のトルテッローニへと進みます。こちらはイタリアの郷土料理として知られる詰め物入りのパスタ料理。

アワビの肝を使ったソースがかかっており、素朴ながら程よい旨みが感じられます。繊細な食材の旨みを見事に引き立てており、食材に対するシェフの愛情が感じられるひと皿でした。
そしてお待ちかねのメイン料理へ。本日は魚料理がマナガツオのポワレ。肉料理が和牛フィレのロティとのこと。

メインに備え、赤ワインに切り替えます。脂が乗った近海もののマナガツオは肉厚かつ旨み十分! フレッシュトマトのソースのさっぱりとした風味と相性抜群です。

そしてトリを飾る和牛フィレのロティが登場。県内でも有名な三次シラーの赤ワインを贅沢に使ったソースでいただきます。
濃厚ながら上品な牛肉の旨みと、赤ワインソースが互いを高め合っているようで見事な相乗効果を生んでいます。すかさず赤ワインをゴクリと流し込むと、まさに心地よい後味と余韻が広がっていくのを感じました。これを繰り返すこと数回でメインの肉料理も完食。
おかげでワインもかなり杯が進んだようです。まさに江田島をはじめ、瀬戸内の恵みをまるごといただいたかのような口福感が感じられました。
食後に供されたデザート「江田島産桃とさとうきびのカタラーナ」をいただいて至福の時間は終了。自慢の温泉にじっくりと浸って明日に備えるとしましょうか。