移転してようやく訪問できた幻の店『Sらーめん 丹波篠山本店』

今回とり上げるのは、2024年8月7日に大阪府茨木市から移転オープンした『Sらーめん 丹波篠山本店』。
移転前は、大阪府茨木市で営業していた。ただし、茨木市と言っても、ただの茨木市ではない。銭原という秘境に近い環境下で、完全予約制で月に1日だけ店を開ける、全国屈指の超高ハードル店として名を馳せていた。
しかも、競争率の高さゆえに予約を取ることすら極めて困難ということで、歴戦のラーメンマニアでさえなかなか足を運ぶことができない“幻の店”だったのだ。
そんな幻の店が、2024年8月に丹波篠山市へと移転。移転後の店舗のロケーションは、JR篠山口駅の改札から約100m。しかも、国道176号線沿いという交通至便な立地。

瀬戸内海沿岸の都市圏(JR尼崎駅)からJR篠山口駅までは、福知山線で1時間強かかるが、茨木市の秘境に店舗を構えていた移転前と較べれば、アクセスは格段に向上したと言える。
何よりも、「完全予約制で営業は月に1度」という、ほぼ臨時営業に近い形態から、「定休日(木曜)を除き、毎日営業する」営業形態へとシフトしたことは、ラーメンマニアにとっては嬉し涙が出るほどの朗報だろう。
と、そんなわけで、移転前の状況では、あまりにも険しいハードルを前に、ただ指をくわえて他のマニアの訪問記録を眺めているしかなかった私も、今般、ついに同店への訪問を果たすことができた。

現在、同店が提供するレギュラー麺メニューは、「鶏そば塩」「鶏そば醤油」「鶏白湯塩」「鶏白湯醤油」など。そのほか「叉焼丼」「そぼろ丼」「鶏チャ漬け」など、興味をそそられるサイドメニューも豊富に揃え、思わず目移りしてしまうほど。
私は今回、初訪問だったので、何を注文しようか非常に迷ったが、自らの直感に従い「鶏そば塩」と「鶏チャ漬け」をオーダー。

限りなく透明に近い淡麗スープは、厚みのある鶏のコクと滋味が、味蕾を通じて全身の細胞へと染みわたり、瞬く間に多幸感に包まれる圧巻の出来映え。とりわけ、滋味の拡散力は卓越したものがあり、スープを口に含んでからしばしの時が経過しても、知覚できる風味に全く衰えが見えないことには、驚きを禁じ得なかった。
心持ち強めに押し出した塩カエシの味わいも、鶏の素材感をキリリと引き立たせる役割を好演している。
繊細なタッチで上質なうま味を紡ぐスープは、さらに、序盤・中盤・終盤とグラデーションを描きながら絶え間なく変遷。ここまでハイレベルなスープを自然豊かな丹波篠山市の地で味わえているという事実を、にわかには現実として受け止め切れなかったほどだ。
細ストレート麺の触感のなめらかさも規格外で、すする際にストレスをまったく感じさせない点も特筆に値する。
![「鶏チャ漬け」[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/06/20250622-slamen08.jpg)
近所に住んでいたら、間違いなく通い詰め、全てのメニューをコンプリートしていたことだろう。現状、同店が兵庫県内においても五指に入る優良店であることに疑いを差し挟む余地はない。
●SHOP INFO
Sらーめん 丹波篠山本店
住:兵庫県丹波篠山市大沢2-9-7 KOSUGI彩華ビル1F
TEL:080-2418-6589
営:月・火・日・祝日11:00〜15:00(14時半LO)
水・金11:00〜15:00(14時半LO)、17:30〜21:30(LO)
土11:00〜15:00(14時半LO)、17:00〜21:30(LO)
休:木曜(臨休あり・SNS等で要確認)
席数:14席(カウンター6・2人掛け4)
※店舗向かいに駐車場6台
●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。