
●最近、町中華に新たな需要を生んでいるのが、料理を酒と楽しむスタイル。年間600杯を食すラーメン女子・森本聡子さんも、“町中華飲み”にハマっている一人。そんな森本さんに、至極の町中華飲みに案内してもらいました。
「旧くから街で愛される名店ですが、あえて町中華として推したい」と森本さんに言わしめるのが、麻布十番にある『永新』。創業は1961年で、この界隈では高級中華で知られる『登龍』や『中国飯店』よりも歴史が旧い、屈指の老舗中国料理店なのだ。

20年前に代替わりした二代目店主・楊伸峰(ヨウシンホウ)さんは、都内のホテルや横浜の中国料理店で、広東料理の研鑽を積んできた生粋の料理人。町中華と呼ぶには憚られるクオリティの本格中華を提供する一方で、一人でも立ち寄りやすいアットホーム感も併せ持つ、なかなかに稀有な店だ。

こちらでまず酒のアテに頼みたいのが「野菜炒め」。森本さん曰く「野菜の多彩さや切り方、食感を生かした火入れに、本格中華の風情が窺える一品」。

さらに、酒肴を開拓するなら、楊さんの代で新たにメニュー化したという、小皿料理がまたいい仕事をしてくれる。「むきあさりの小松菜炒め」や「揚げワンタンの甘酢ソース掛け」など、ひと手間掛けたオリジナル料理に、甕出しの老酒がすすんでしまうこと請け合いだ。

そして、創業時から変わらぬメニューを多く残す麺料理の中でも森本さんがこの店で欠かさずリピートしているのが、「ねぎそば」だ。大量のネギを使いながらも臭みはなく、香りや甘みが勝つのは、素材の良さと技術の高さ故。「世のネギラーメンとは一線を画す麺料理で、つまみとしても成立してしまう不思議な魔力がある」のだという。
![20年近く注ぎ足す秘伝のタレで仕込むチャーシューと、1本分のネギがたっぷりのった「ねぎそば」[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2024/11/20241117-eisin06.jpg)
麻布十番のど真ん中にありながらかつての下町風情を残す昭和レトロな佇まいの店で、上質な町中華と酒を嗜む。そんなギャップを楽しませてくれる一軒である。
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