和歌山に伝わる金山寺味噌の名店『太田久助吟製』。江戸から変わらぬ味噌づくりのこだわり

和歌山に伝わる金山寺味噌の名店『太田久助吟製』。江戸から変わらぬ味噌づくりのこだわり
『太田久助吟製』の店頭風景

 日本における醤油づくりのルーツが和歌山県・湯浅町にあることは、前回の『角長 本店』の記事でお伝えした通りです。

 この記事で、「金山寺味噌の製造過程で出る上澄み液が醤油のルーツになっている」と書きましたが、今回はその金山寺味噌のお話です。

 金山寺味噌とは、鎌倉時代に紀州から中国の径山寺(江蘇省・杭州)に渡った禅僧が現地で学んだ製法を伝えたとされる、和歌山発祥の“なめ味噌”の一種。味噌汁など料理に使う味噌ではなく、そのまま食べる、いわゆるおかず味噌です。

『太田久助吟製』の金山寺味噌
『太田久助吟製』の金山寺味噌

 イメージとしては居酒屋などで見かける「モロキュウ」の上の“もろみ味噌”に近いですね。もろみ味噌と大きく異なるのは、金山寺味噌には野菜が入っていること。和歌山県では、昔から茶粥のお供として愛され続けています。

 さて、古くは熊野古道に通ずる宿場町として栄え、醤油や味噌の醸造蔵が立ち並ぶ湯浅町の重伝建地区に、江戸後期から金山寺味噌を作り続ける一軒の味噌蔵があります。店の名は、『太田久助吟製(おおたきゅうすけぎんせい)』と言います。