【江戸時代から続く老舗の名物】神田明神前の茶屋『天野屋』、時を忘れて“甘酒”を味わう

【江戸時代から続く老舗の名物】神田明神前の茶屋『天野屋』、時を忘れて“甘酒”を味わう
お神輿が飾られた趣ある建物。右手は売店、立派な松の木の奥に喫茶部の入口が静かに佇む

 神田明神の大鳥居横に佇む、風情ある店構え。こちらは、自家製糀を使った甘酒で有名な『天野屋』です。

 創業は江戸時代末期の1846年(弘化3年)で、179年の歴史を誇ります。店舗の地下には関東ローム層を地下6mまで掘って作られた室(むろ)があり、1904年(明治37年)の建築以来、現在まで天野屋の甘酒や味噌等の糀(米こうじ)製造に使用されています。

糀を育む「室(むろ)」の歴史を伝える、千代田区指定有形文化財の看板(店舗右手)
糀を育む「室(むろ)」の歴史を伝える、千代田区指定有形文化財の看板(店舗右手)

 神田明神へお参りするたびにとても気になっていた『天野屋』の趣深い木造の建物。それもそのはず、千代田区景観まちづくり重要物件に指定されているそう。

 店舗は二棟に分かれており、右側が天野屋で製造する「明神甘酒」「芝崎納豆」「江戸味噌」等を販売する売店で、左側が喫茶部。やや緊張しながら喫茶部の「明神甘酒」の暖簾をくぐると、アンティークのランプやレトロ看板、鉄道模型が飾られた懐かしい空間が広がっていました。

「明神甘酒」の暖簾が目印の喫茶部入口 [食楽web]
「明神甘酒」の暖簾が目印の喫茶部入口 [食楽web]
風鈴の音色に迎えられるレトロな店内。窓の外には庭の緑も映える
風鈴の音色に迎えられるレトロな店内。窓の外には庭の緑も映える

 時間がゆっくり流れる、なんとも落ち着く空間。訪れた日は甘酒とミニおもちを注文しました。米と糀だけで熟成させた伝統的製法で作られている甘酒は、砂糖が入っていないのが信じられないほどの甘さで、お米の粒が残り、自然発酵の力強さを感じます。しっかりと醤油の染みた磯部餅に、添えられた沢庵のきりっとした酸味が甘酒の甘さを引き立てます。

「おもち(磯部焼2切)+甘酒(冷)」890円。甘酒(温)は840円(全て税込)
「ミニおもち(磯部焼2切)+甘酒(冷)」810円。甘酒(温)は760円(全て税込)

 甘酒は冷・温、おもちは磯部焼かあべかわ餅を選ぶことができます。他にも、甘酒を使ったかき氷やあんみつ、みそおでん等たくさんの喫茶メニューがあり、悩む時間も楽しいです。

 素朴な素材と発酵の力が生きる甘酒と磯部餅で、心もお腹も満たされるひとときでした。売店では甘酒や納豆・味噌も販売しているので、お土産にするのもおすすめです。

 冷やし甘酒、俳句では夏の季語なのだとか。江戸時代には、夏の栄養補給・暑気払いとしても親しまれていたそうです。冷やしても温めても一年中楽しめる甘酒。神田明神にお参りの際は、『天野屋』伝統の甘酒でほっとひと息ついてみてはいかがでしょうか。

(撮影・文◎すずらん)

●SHOP INFO
天野屋

住:東京都千代田区外神田2-18-15
TEL:03-3251-7911
営:10:00~16:00(L.O.15:30)
休:火曜(祝日の場合は営業し、翌水曜が休み)、海の日、8月10日~8月18日
http://www.amanoya.jp/

●著者プロフィール

すずらん

おいしい食事とお酒を楽しみに生きるアラフィフ銀行員ライター(フードアナリスト4級)。東京と両親の出身県であるおんせん県大分(推し)のおいしいものを中心にご紹介します。

●すずらんさんのおすすめ記事
【東京モーニング】白金台にあるレトロ建築内の博物館カフェでゆったり楽しむ野菜たっぷりモーニング