週4日・3時間営業の超名店|ラーメン工房 大市(あわら市)

このコラムの締めを飾るのは、あわら市の『ラーメン工房 大市(だいいち)』。
ロケーションは、えちぜん鉄道三国芦原線・水居駅から1.2km。この水居駅は、三国芦原線の終点(三国港駅)にほど近く、福井駅からは片道40分強の時間を要する。公共交通機関と徒歩でアクセスするには、相当な覚悟を要する立地だ。
この店は、何を隠そう、私が10年前、初めて福井県を訪れた時にスープ切れで振られた因縁がある、宿題店中の宿題店。福井を訪れた際には必ず再訪し、10年前の雪辱を果たそうと心に誓っていた。

『大市』が店を開けるのは、木曜〜日曜までの4日間。営業時間は10時半〜13時半までのわずか3時間。難攻不落とでも言うべきハードルの高さは今もなお健在だが、今回は、満を持して営業開始時刻の30分前(10時)に店頭へと到着。おかげさまで、晴れて10年越しの宿題をクリアすることができた。
さて、そんな同店が提供する麺メニューは、「醤油こってり」、「塩こってり」、「とっとき」など。いずれの品も規格外の完成度を誇るが、中でも特にオススメしたいのが「とっとき」だ。「とっとき」とは、豚骨塩スープに麺を泳がせ、トッピングに大量のネギ・刻みチャーシュー・生卵を配した名物商品。

スープをひと口すすった瞬間、「これは、福井はおろか全国でもトップレベルの豚骨ラーメンだ」と確信。柔らかな丸みを帯びた塩ダレが、コク深い豚骨スープと水魚の如く交わり、舌上で至高のハーモニーを奏でる。
すすりを重ねるにつれて、右肩上がりに深まりゆく余韻。中盤以降、満を持して卵黄をスープに溶かし込めば、豚骨のうま味の細かな襞に卵黄の豊潤なコクが滑り込み、滋味の高まりが極点へと到達する。
みずみずしい弾力と抜群の歯切れの良さを兼ね備えたストレート麺も、適量のスープを孕みながら口元へと吸い込まれ、唇を快楽の虜にする。「佐賀ラーメン」のような上質な甘みと、古(いにしえ)の「京阪神ラーメン」を想起させる動物系の滋味が口内で固く握手する、唯一無二の1杯だ。
丼を空けた後にこぼれるのは、感嘆の溜息のみ。福井のラーメン食べ歩きにおいて、この店を積み残すのは、痛恨の極みとしか言いようがない。万難を排して足を運ぶべき名店だ。
●SHOP INFO
ラーメン工房 大市
住:福井県あわら市中浜1-14-1
TEL:0776-77-3810
営:10:30〜13:30
休:月・火・水
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店開拓・知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンをエリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。





