
●おいしいローカル部が教える老舗の名店。今回は麻布十番にあるやきとんの名店『あべちゃん』が愛され続けるワケを探りました。
やきとんの名店『あべちゃん』は麻布十番駅から徒歩2分。ファサードに創業昭和8年と記されているように2025年時点で92年目の老舗。「セレブな街の庶民派酒場」として街の変化に寄り添い続けています。

創業当初は「高砂屋」でしたが、常連客が親しげに店主の名前で「阿部ちゃん」と呼び続けたことで現在の店名に。シンボルでもある異形の「タレ壺」は、二代目の英機さんがタレを拭かずに蓄積し続けて形成されたもの。三代目の今も現役で使われています。
地下鉄大江戸線の開通後、女性客を中心に客足が倍増。時代の変化に合わせてメニューを追加するなど柔軟な対応を繰り返し、幅広い客層に支持されています。

来たからには「タレ」を味わうのがマスト!
やきとん、やきとりともに1串各240円。ただし、単品注文は2串以上のオーダーがルールなので、初めてなら焼き物盛り合わせがリーズナブルかつオススメ。やきとんを中心にランダムに5本提供されます。訪れたときはシロ、ナン骨、ハツ、カシラ。あべちゃんのいいとこ取りをサクッと堪能できます。
注文する際にタレか塩か訊かれますが、あべちゃんらしさを味わうならタレを。店頭のタレ壺がシンボル&ウリですし、実際に店内を見てもやはり9割以上がタレを注文しています。

お持ち帰りの目当ては「牛もつ煮込み」
牛もつ煮込みも絶対に食べておくべき看板メニューのひとつ。雑味もエグみもない濃厚な味噌煮込みの中に、さまざまな部位の牛の内臓肉がたっぷりと詰まっています。器の底には味の沁みた焼き豆腐がひっそりと忍ばせてあり、煮汁と一緒にご飯に載せて「とうめし」にしたいほど。ちなみに、テイクアウト客の大半がこの牛もつ煮込み目当てなのだとか。
![「牛もつ煮込み」900円。重厚な牛もつ+濃厚な味噌のヘビーウェイト同士の足し算の素晴らしさよ。酒もコメも進むギルティ(誉め言葉)な逸品 [食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/10/20251101-abecyan05.jpg)
筆者の経験上サッポロラガービール(通称「赤星」)を置いているお店は、基本的にハズレが無いのですが、ここは大当たり。酒場でありながらお通しが無いため、チャージ料が発生しないのもありがたいところ。やきとんも牛もつ煮込みも濃厚かつボリュームがあるため、思いのほかリーズナブルに利用できると思います。
また、ランチ営業もしているのでノンアルでやきとん、牛もつ煮込みを味わいたい方も楽しむことができます。

『あべちゃん』は街と人と味が交差する場所

もし麻布十番でガチなやきとんを食べたいなら、まずはこのタレ壺に会いに行くべき。昭和8年から続く味の記憶が、今も一串一串に染み込んでいます。あべちゃんはただの老舗ではなく、街と人と味が交差する場所なのです。
●SHOP INFO
あべちゃん 麻布十番店
住所:東京都港区麻布十番2-1-1
TEL:03-3451-5825
営業時間:月〜土17:00〜23:00
定休日:日
●著者プロフィール
クワハラすえぞう
副業で間借りカレー店を6年運営していた普通の会社員(勤務先から承諾済み)。週末は新大久保「イスラム横丁」の徘徊率が高い。座右の銘は「食こそ最高の自己投資」。2級フードアナリスト。
@currygenom






