ふらりと辿り着いた名店の味。日本橋で半世紀以上愛される老舗洋食店『レストラン桂』の日替わりランチ

ふらりと辿り着いた名店の味。日本橋で半世紀以上愛される老舗洋食店『レストラン桂』の日替わりランチ
食楽web

 じめりとしつこい暑さの残る日でした。日本橋で取材があったので、ちょっと早めに出かけてランチをしようと、気持ちを振るいたたせ、地下鉄に飛び乗りました。

 朝のラッシュも過ぎた頃、座席に座りながらどこにしようかスマホ片手に、「日本橋、ランチ、人気」と検索しとうとした時に、ふと、「ふらっと歩いて見つけた店に入ろう」と心に決めました。

歴史ある景色を散歩しながら見つけた一軒の老舗レストラン

 そうと決めた時に三越前駅のアナウンス。日本橋に向かって歩いて行こうと急いで降りて地上へ。ビルの谷間を吹き抜ける風に顔を背けなんとか階段を上がると、クラシカルな三井本館、ガラス張りの高層ビルとが対峙し、歴史を積み重ねた景色が広がっていました。

レストラン桂
レストラン桂

 中央通りを少し歩くと石畳の仲通りがあり、吸い寄せられるように足を踏み入れました。どこか懐かしさがあり、昼の人波も多く、何かありそうと予感させるような通りです。ずんずんと軽快に進んでいくと、ガラス越しに色とりどりの食品サンプルが並ぶ一角に出会いました。

 初見でもわかる老舗感漂う『レストラン桂』。昭和の匂いをまとった佇まいに惹かれ、迷いなく扉を押すと、落ち着きがありながらも、活気の満ちた空気の中、白いテーブルの上にはエビフライやオムライス、ハンバーグと言った洋食が並び、食事を楽しむ人の姿が広がっていました。

 たどり着いたことに満足感を得ながらも、胃袋は正直なもので着席した途端、安堵したようにぐぅっとお腹からの一声。

老舗を感じる「日替わりランチ」を注文

さて、何を注文しましょう
さて、何を注文しましょう

 お隣に届いたぶ厚いメンチカツは、ザクザクっという音が私の耳にも届くほどですし、向かいのテーブルにはグレービーボートに入ったカレーをご飯にトロっとかけている最中で、その連れの方はスマホでオムライスの写真を撮ってから、ちょうどケチャップのかかったぷくっとしたふくらみにスプーンを入れていて……。

 全部おいしそう。決められない。
 悩んだ末に、「日替わりランチ」をチョイスしてしまいました。あまり自分の選択に後悔することはないのですが、これはちょっと及び腰だったか……とこの時ばかりは料理が到着するまで、なんとも言えない緊張感がありました。

日替わりランチ「鰆バタ焼き&チキンカツレツ」
日替わりランチ「鰆バタ焼き&チキンカツレツ」

 お待たせしました、という柔らかな声とともに、目の前に広がった「鰆バタ焼き&チキンカツレツ」。“バタ焼き”というのが、とても良い。鰆はふっくらと焼き上げられ、口に運ぶとまずバターの香りがふわりと広がり、鰆の上品な旨味がじんわりと追いかけてきます。  

 本来淡白な鰆ですが、長年の技により、ふっくらでありながらバターのコク、タルタルソースが重なり奥行きを生みます。

 チキンカツレツは、ナイフを入れるとザクザクっと衣が軽快に音を立て、瞬間から肉汁がじゅわっと溢れました。デミグラスソースも歴史感じる濃厚な味わいで、酸味と苦味のバランスも良く、ライスに合う味わいなのです。

 脇役として添えられるナポリタンも秀逸で、ケチャップの甘みとソテーされた玉ねぎの香ばしさが調和し、まるで小さな主役のように存在感です。

 やっぱり日替わりランチにして大正解。「レストラン桂」の味と技、歴史を一皿で体感でき、とても大満足でした。

 会計を済ませて外に出ると、現実に引き戻されるような暑さが押し寄せましたが、気分はとても晴れやか。東京で老舗の洋食を体験するなら、『レストラン桂』は外せない一軒でしょう。

(撮影・文◎亀井亜衣子)

●SHOP INFO
レストラン桂
住:東京都中央区日本橋室町1-13-7
営:11:00〜14:00、17:00〜21:00(L.O.20:30)※土曜はランチのみ
休:日、祝日