無形文化遺産ペアリング!『REY peruvian cuisine』で味わうペルー料理・日本酒【酒屋と飲食店のおいしい関係】vol.5 神奈川県・武蔵小杉

アンティクーチョと「東力士 熟露枯(うろこ)」のペアリングが生むおいしい世界

「牛ハツのアンティクーチョ」 下に敷いてあるのはキャッサバ芋のフライ、奥にあるのはアヒ・アマリージョという黄色の唐辛子のソース
「牛ハツのアンティクーチョ」 下に敷いてあるのはキャッサバ芋のフライ、奥にあるのはアヒ・アマリージョという黄色の唐辛子のソース

「アンティクーチョ(串焼き料理)」は、ペルーのソウルフードとして多くの人に愛されています。このアンティクーチョの起源を辿ると、スペインの侵略時代、奴隷として連れてこられたアフリカ系の人々の創意工夫に行き着きます。

 当時、ヨーロッパの上流階級が肉の上等な部位だけを食べる一方、残された内臓部分をどうにか美味しく食べようと考えたのがアフリカ系の人々だったそうです。ペルーの唐辛子やスパイス、そして保存目的のマリネ技術を駆使して生まれたのがアンティクーチョ。その味は、ペルーの食文化に深く根付くと共に、屋台料理として発展し、今ではステーキよりもアンティクーチョの方が美味しい!という人も増えているそうです。

唐辛子と日本酒が織りなすマリアージュ

シェフ:アヒパンカというそれ自体が燻製ですごく力強い味と旨味がある唐辛子があるんです。そこにクミンなどのスパイスを加えて牛ハツを漬け込んで、最後鉄板で焼く料理なんですけど。複雑な、特にスモーキーさとスパイシーさが混ざっている料理なので、それに負けない日本酒はないかと佐藤さんに相談したんです。

佐藤さん:去年の秋でしたね。食材も旨味が濃かったりお酒も熟成して深い味わいになってくるので、季節酒ではありませんが定番の約2年熟成酒「熟露枯」を提案しました。
いくつか熟成酒を留美さんにテイスティングしてもらった中で一番手応えがありました。
加えて「海風土」に負けないインパクトやストーリーをともなうお酒ということで。
肉を焼いた時に褐色づいて香ばしさと旨みが引き出されることと、日本酒が熟成することで飴色になり香りが変わり旨味も増幅することは同じ変化です。焦がした料理と熟露枯は合いますよ。熟露枯は温度変化が楽しいお酒でもあります。
冷酒で酸が立って引き締まり、燗でまろやかになりゆるゆると、緩急のあるお酒です。季節柄、温かい料理に温かいお酒を合わせるのも良いですからね。

シェフ:飲んでみて、アンティクーチョに合わせるならば「熟露枯」で間違いない。古酒なので日本酒というより少しだけブランデーに近くなっていくような味わいを感じました。それに対してちょっと土の香りを混ぜた方が美味しくなるかもと、ひらめいたんです。新しく2種類のごぼうのソースを作って合わせると、それもバッチリでした。
料理にお酒を合わせるだけでなく、お酒からインスピレーションを受けて料理を作ることもあるんですよ。

「牛ハツのアンティクーチョ」と「東力士 熟露枯」のペアリング
「牛ハツのアンティクーチョ」と「東力士 熟露枯」のペアリング

 ペルーの乾燥唐辛子「アヒパンカ」のスモーキーな風味とコク、複雑なスパイス、そして牛ハツの旨味に、「熟露枯」のほろ苦さと熟成感が絶妙にマッチ。

「アヒ・アマリージョ」という黄色の唐辛子を使って作ったソースを付けるとより奥深い旨みを感じます。

話は「東力士」の蔵元「島崎酒造」の話に

佐藤さん:「熟露枯」を『REY』さんで使っていただいた後に、お二人から蔵見学に行きたいと申し出がありました。ストーリー、臨場感を大事にする方々なのでご紹介したいなと思ったんです。蔵元の島崎健一さんにお話ししたところ快諾していただきました。その時に、2012年にペルー大使館でペルー料理とのペアリングをしたことがあるとおっしゃってて、これまた図らずも親和性のあるペアリングだったんだなと嬉しくなりました。

シェフ:すでにペルー料理とペアリングしていたなんて驚きですよね。また、島崎酒造さんは洞窟で熟成しているんですよね。外国人観光客が知ったら絶対に観光スポットになりますよ。

佐藤さん:もともと戦車工場になるはずだった洞窟ですが、完成前に終戦したんです。長らくほったらかしだったようですが、1999年から島崎酒造が借り入れて日本酒の貯蔵に利用しています。洞窟内は特殊な環境で、昼夜や季節の温度変化がお酒に複雑な効果を生み出すそうです。そのせいなのか、こちらの熟成酒は年数の割に若く感じるんですよ。

シェフ:佐藤さんからは、「熟露枯」を使うなら開栓して1年ほど低温で置いても美味しく変化しますよと教えてもらいました。

佐藤さん:これね、開栓から1年経ってる「熟露枯」です。最初に留美さんがテイスティングした時のものです。

 持参した袋からお酒を取り出す佐藤さん。どうやら自家熟成で“勝手に育ったお酒”のようです。

一同:香りが全然違います! 旨味もこっちの方がまろやかにまとまってる…

 と話が止まらないので、今回の一杯サービスのお酒を佐藤さんに紹介してもらうことにします。

「東力士 極雫 純米生原酒 FIRST DROP」
「東力士 極雫 純米生原酒 FIRST DROP」

佐藤さん:「熟露枯」と同じ島崎酒造のメインブランド、「東力士」のできたての新酒です。もろみを袋に詰めて吊るし、圧縮のストレスをかけず自重で滴り落ちる雫だけを集めた贅沢なお酒です。手間と時間をかけて多くは大吟醸クラスのお酒で見られる手法ですが、島崎酒造は純米酒でもやってしまうんです。フルーティな香りとなめらかでジュワッとした口当たりは「熟露枯」とは真逆のフレッシュさで、蔵の振り幅を楽しんでいただけますよ。

奥様:(ひと口飲んで)これ、きゅうりのソースと合うんじゃないかしら?
料理と合わせてお酒を飲む楽しみを知ってほしいので、お店にはペルー料理に合う日本酒やワイン、ピスコを組み合わせたREYオリジナルペアリングメニューを用意しています。「セビチェ」には「海風土」、「牛ハツのアンティクーチョ」には「熟露枯」など、それぞれにおいしい発見や楽しみ方ができるのも、飲食店ならではだと思うんです。ペルー料理と日本酒をペアリングしているお店はまだ少ないと思いますし。

まとめ

『地酒や たけくま酒店』と『REY peruvian cuisine』のおいしい関係、いかがでしたでしょうか。無形文化遺産のペアリングとなった今回。ご紹介した蔵元、今田酒造本店も島崎酒造も世界に向けた日本酒の発信に力を入れていて、これからまた日本酒を飲む人が増えたり、思いもよらない組み合わせを発見するなど新しい展開を見せてくれると期待せざるを得ません。

 引き続き、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を追いかけます。

 次回はどんなお酒とどんな飲食店が登場するか?お楽しみに。

*みなさんの好きなお酒の銘柄を教えてください。好きなお酒の思い出、エピソードなどもあると思います。是非、『好きなお酒の銘柄』を下記のフォームにお寄せください。
●『好きなお酒の銘柄』書き込みフォーム
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無くなり次第終了!「極雫 純米生原酒 FIRST DROP」一杯サービス企画

『REY peruvian cuisine』のご協力のもと、お店で「食楽webのinstagram」をフォロー、フォローしている画面を見せると「東力士 極雫 純米生原酒 FIRST DROP」一杯サービス!

 無くなり次第終了です!

●SHOP INFO

清潔感のある心地よい店内
清潔感のある心地よい店内

REY peruvian cuisine

住:神奈川県川崎市中原区今井南町 19-2
営:12:00〜14:30 (ラストオーダー 13:30)、18:00〜22:30 (ラストオーダー 20:30)
休:ホームページをご覧ください
https://www.instagram.com/reyperuviancuisine/
*営業時間などは店舗SNSなどでご確認ください

●SHOP INFO
地酒や たけくま酒店

本店
住:神奈川県川崎市幸区紺屋町92
TEL:044-522-0022

元住吉店
住:神奈川県川崎市中原区木月3丁目10-17
TEL:044789-5561

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(企画・取材◎ヨネダ商店)