変わらぬ場所で変わり続けるために

「タバカン」を生み出したのは、伊豆大島・元町港近くに店を構える『えびすや土産店』さん。1955年創業以来、島を訪れる観光客を迎えてきた老舗です。
現在は三代目のほたるさんが舵を取り、先代の味と信頼を守りながら、新しい伊豆大島みやげの形を模索しています。「“港の近くだからたまたま立ち寄る店”ではなく、“目的地として訪れたくなる店”を目指しています」とほたるさん。今回、タバカンについてお話を伺ってきました。
「同じじゃつまらない」から始まった挑戦

「売っているものが、どこも一緒だね」
観光客のその一言が、タバカン誕生のきっかけでした。伊豆大島のお菓子のお土産といえば牛乳煎餅が有名ですが、訪れる側にとっては似た印象のおみやげが並んでいたのです。

島ならではの素材を使い、なおかつ日持ちがして、閑散期もお店を支えてくれる次なるメイン商品をつくりたい。そう考えたときに浮かんだのが、伊豆大島名産の明日葉と羊羹の組み合わせでした。
かつては問屋から仕入れた羊羹を扱っていたそうですが、包丁で切って食べる昔ながらのイメージが強く、購入者は年配層が中心。
「もっと若い人にも楽しんでほしい」という想いから、一口サイズで手軽に食べられる形に。スポーツイベントが多い伊豆大島で、「補給食としても食べてもらえたら」という願いも込められています。

商品名は明日葉×羊羹で「タバカン」に。タバカンをひと口食べると、抹茶を思わせるほろ苦さのあと、明日葉の爽やかな香りが口の中にふわりと残ります。これが思わずクセになってしまう味わいなのです。
実は、ほたるさん自身が「明日葉の甘いお菓子は苦手」だったと言いますが、タバカンは試作一回目で「これならおいしい」と即OKを出した自信作だそう。
明日葉を食べる犯人が堂々とパッケージに

タバカンの魅力は、味だけにとどまりません。
パッケージデザインは島内のデザイナーに依頼し、明日葉を食べてしまう害獣・キョンを大胆にあしらいました。「キョンを出したら面白いかなと思って(笑)」と、ほたるさん。
ポップで親しみやすいデザインは若者を中心に好評。裏面には明日葉農家や、キョンにまつわるミニ情報も記されており、旅の話題づくりにも一役買ってくれそうです。
帰ってから、また思い出す味

「タバカンは初めての委託製造で、わからないことだらけでした」と振り返るほたるさん。構想から発売までにかかった時間は約2年。それでも妥協せず完成させた背景には、「他とは違うもので喜んでもらいたい」という強い想いがありました。
現在はラインナップに「シオカン」(塩の羊羹)も加わり、シリーズ展開も進行中。伊豆大島を訪れた際は、ぜひ『えびすや土産店』に立ち寄って、想いの詰まったタバカンを手に取ってみてはいかがでしょうか。
●SHOP INFO
えびすや土産店
住:東京都大島町元町1-17-1
TEL:04992-2-1319
営:8:00~17:00
休:木曜(椿まつり期間中は無休)
●著者プロフィール
柴田珠実
紅茶マーケター/フードアナリスト。食品メーカーで紅茶のマーケティングを担当し、年間50品以上の新商品を企画・開発。市場ニーズと味覚トレンドを読み解く力に定評がある。出身地の千葉県や伊豆大島の観光大使や、テレビ番組のレポーター経験も持ち、日本各地の食や文化を伝える活動を続けてきた。「五感に響く体験を届けたい」を信条に、食と旅、地域、文化をつなぐ表現を探求中。
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