ラーメン官僚が“2023年の主役級”と推す注目店『Japanese Ramen五感』(池袋)がスゴい理由

完成度の高さに驚愕!「醤油らぁめん」と「塩らぁめん」

店内は、カウンターのみ8席。厨房を囲むコの字型になっていてライブ感満載
店内は、カウンターのみ8席。厨房を囲むコの字型になっていてライブ感満載

 現在、『五感』が提供する麺メニューは、「醤油らぁめん」1200円、「塩らぁめん」1300円、「つけめん(醤油)」1350円の3種類。券売機左側から「醤油」「塩」「つけ」の順に並び、「つけめん」は数量限定です。

 最もシンプルな基本メニューでも、価格は4桁の大台に乗りますが、私が知る限り、同店のラーメンについて「値段が高過ぎる」といった声を耳にしたことはありません。むしろ聞こえてくるのは「この価格でご提供いただき有難うございます」という言葉ばかりです。

「醤油らぁめん」1200円。連食は禁止。しかしがんばって2度は足を運んで、「醤油らぁめん」と「塩らぁめん」の両方を味わってもらいたい
「醤油らぁめん」1200円。連食は禁止。しかしがんばって2度は足を運んで、「醤油らぁめん」と「塩らぁめん」の両方を味わってもらいたい

 「うちでは純国産のラーメンを提供しています。食は人類の未来を創るエネルギー源。この時代の日本に生を受けたことに感謝し、素材を育んでくださる生産者の方々と共に『美味しいもの』をつくり上げていきたい。そんな想いをカタチにするため、使用する丼は一点一点、形状・色合いが異なるものを用い、ラーメンを構成する素材も、すべて国産品で統一しています」と店主。

 そう奥地店主が語る通り、眼前に供された1杯は、ビジュアルをひと目見ただけで、凡百の淡麗ラーメンとは次元がまるで異なることが見て取れるもの。ある程度の食べ歩き経験を重ねたマニアであれば、そのスープの色合いだけで、その発色の美しさに埋めがたい卓越性を見出すことができるはずです。

「塩らぁめん」1300円
「塩らぁめん」1300円

 スープから立ち上る香りの麗しさも尋常ではありません。スープに用いる様々な素材の香りが絶妙な塩梅で融合し、骨太な一本の柱と化して鼻腔を心地良く刺激。嗅ぎ取った刹那、恍惚の境地に陥ってしまうほど妖艶な色気を感じる香気です。

 スープは、店主が全意識を集中させて、比内地鶏・みやざき地頭鶏・名古屋コーチンなど、全国各地から厳選した地鶏からうま味の粋のみを切り出した動物系出汁と、天然ものの蜆・浅利・蛤・貝柱などの滋味を凝縮させた魚介出汁(貝出汁)とを、羅臼昆布で風味にさらなる厚みを加えながら重ね合わせたもの。

スープ素材
スープ素材

 もちろん、両者をただ単純に合体させたものではありません。開発に当たり、店主はタレと出汁の相性の善し悪しを徹底的に研究。「醤油」は鶏成分を相対的に増やし、「塩」は鶏と貝とを拮抗させるなど、「醤油」と「塩」とで、使用する出汁のバランスに変化をつけています。

「塩らぁめん」の美しい黄金色のスープ
「塩らぁめん」の美しい黄金色のスープ

 そうして完成したスープは、すする度に、山海の恵みに由来する滋味が舌上で活き活きと躍動。「醤油」は、複数の貝類が手を結び土台となって鶏のうま味を際立たせる構成、「塩」は、鶏と貝の成分がひとつの大きなうま味の真円を描く構成となっています。

 上質な風味が鮮烈な記憶を刻み込むタレの後押しも相まって、一度手を付けたら最後、レンゲを持つ手を止めることは不可能。タッパーに入れて持ち帰りたくなるほど驚異的な完成度の高さを誇ります。

「醤油らぁめん」「塩らぁめん」で異なる麺を使用
「醤油らぁめん」「塩らぁめん」で異なる麺を使用

 このスープに合わせるのが、都内の名門製麺所『大成食品』へと特注した、国産小麦のみを用いて作られた中細ストレート麺(※3)。素材感豊かなスープの風味を、寸分も損なうことなくダイレクトに食べ手へと伝え切る「このスープにしてこの麺あり」の傑作。すすり心地が軽やかで柳枝のようにしなやかな麺は、どれだけすすっても飽きることがありません。

(※3)「つけめん」は、太麺(平打ち)を使用。また、「塩らぁめん」も、好みに応じて太麺(平打ち)へと変更可能

各種チャーシュー。左から特上で使用される近江鴨のロース、鶏胸肉のチャーシュー、黒豚肩ロースのチャーシュー
各種チャーシュー。左から特上で使用される近江鴨のロース、鶏胸肉のチャーシュー、黒豚肩ロースのチャーシュー

 チャーシュー、ワンタン等のトッピングも、妥協が介入する余地のない完璧な仕上がりです。炭火焼きの手法によりじっくりと火入れを施した豚チャーシュー、2度の炭火焼きで香ばしく仕上げた鶏ムネ肉、岩手鴨のミンチを贅沢に使用したワンタンなど、店主曰く「素材本来の持ち味を最大限活かすために、シンプルな味付け、香り付けを意識」して作られたトッピングは、いずれも、一品ものとしても十分通用するほど高水準。

「ラーメンは作る上で変数が多い食べ物。スープ、油、トッピングなど、ラーメンを構成するどの要素も、その都度、調整を加えなければ同じ味わいには仕上がりません。レシピも日々刻々と変化します。なので臨機応変に、新たな素材を随時採り入れることなどで対応しています。これからも、日本の食材を駆使しながら、お客さんの五感が悦ぶラーメンを紡いでいきたいと思います」と、抱負を語る奥地店主。

 2023年の都内ラーメンシーンにおける主役級実力店と目される『五感』。今後も、その動向から目が離せそうにありません。