【特集】ぬくぬくとほろ酔いたい、東京・至極の燗酒を愉しませる5軒

ル・ジャングレ @飯田橋

東京・飯田橋

ワイン?燗酒?ふたつの美味が選べる気鋭店

 学芸大学前にあり、自然派ワインと旬材を使った料理を楽しませる店として人気だった同店。約1年前、飯田橋に移転した際、新たに始めたことがある。それまで手がけていなかった日本酒の提供だ。

「元々興味はあったんですが、大きな契機になったのは『根知男山』の杜氏・渡辺さんに出会ったこと。海外でも評価される日本酒造りを目指す彼の話に共感して、そういう志のお酒をみんなに知ってほしい、楽しんでほしいと思うようになったんです」(代表・有沢貴司氏)。

 当初は冷酒での提供が多かったそうだが、今は燗にして美味しい酒も多く揃えるように。「冷たいと閉じたままでてわからなかった旨みや香りといった、味のボリューム感が出るのが魅力に惹かれました」。加えてもう1点。料理との相性だ。同店で提供するのは「サルメリア69」の生ハムをはじめ、和洋を問わない美味しい料理たちで、濃厚な味わいのものも少なくない。「ワインの酸やタンニンよりも、燗酒の熱だからこそ脂や濃厚な味を切ってくれる料理ある。その美味しさを知ってほしいです」。そこで燗酒に向く日本酒の瓶には、50~53など、適温を記入し、興味を持ってもらえるような工夫も。とはいえ、まだまだ燗酒については料理の相性を含め、その奥深さを探求している途中という有沢氏。店の成長とともに燗酒の魅力にはまっていくのも楽しそうだ。


ル・ジャングレ

 左は「焼きナスと生ハムのマリネ 万願寺唐辛子詰め」950円。紫キャベツのピクルスののったナスをご飯、生ハムはタネと寿司の味わいに見立てたひと品。万願寺唐辛子は季節によってピーマンになることも。右は「フォアグラとチーズの茶碗蒸し」950円。フレッシュトリュフも使われ、まろやか、濃厚、香り豊かな茶碗蒸しに。ふた品とも脂肪分が上手に使われた料理で、65度と熱めに燗にすることで味わいが柔らかく開く、熟成感のある「冨玲(ふれい)生酉元仕込 」540円(半合)のような酒がよく合う。


ル・ジャングレ

温度計を使い、その日の気候などに合わせて1度単位で調整し、最適な温度になるよう丁寧に燗にされる。また無濾過のような濃厚な日本酒には、ワインと同じ13%程度のアルコール度数になるように加水して燗に。「冨玲」のほか、左から「竹鶴 純米原酒」「神亀 純米酒」「生酉元のどぶ」(全て半合540円)。夏場は生原酒のスパークリングも揃えるなど、に日本酒の様々な美味しさ、魅力を伝えてくれる。

●SHOP INFO

ル・ジャングレ

店名:ル・ジャングレ
店主・有沢貴司氏

住:東京都千代田区飯田橋4-7-4 グランプラス1F
TEL:03-3556-3202
営:17:00~23:00(22:30LO)
休:日、3連休以上の末日
予算/5000円~ 個室/なし カード/可


火弖ル(ホテル)本店 @吉祥寺

東京・吉祥寺

燗酒の入り口にピッタリな大衆酒場

 吉祥寺に燗酒の魅力を伝えたとも言われる、燗酒専門店『カイ燗』を手がけた小倉氏が開店させた2号店。が、こちらは「『カイ燗』みたいなディープでマニアックな店じゃなく、ビールも焼酎もサワーもオリジナルのボールもと、なんでもあります。日本酒も銘柄なんて気にしない。『お酒ちょうだい』でいいような(笑)、本当に市井な店にしました。料理も刺身にハムカツ、煮込みなど、いろいろ揃えていますしね」

 とはいえ、店に入るとすぐ目に入ってくるのは、ずらりと並ぶ造りがしっかりとした純米や山廃、生酉元といった燗に向く酒たち。そして燗酒もただ出すのではなく、食べている肴などを鑑みて酒を選び、温度を調節しているという。「混んできたらそこまで丁寧にはできないですけどね」と笑うが、やはりここは、日本酒に一家言ある小倉氏の店なのだ。

「日本酒に色が着いているって驚くお客さんも珍しくないですよ。そういった方にこそ燗酒の間口の広さ、奥深さを肩肘張らず気軽に楽しんでもらいたいんですよ」

 日本酒バーや端正な店で日本酒を勉強するように飲むのは……という方。吉祥寺駅から徒歩5分、路地裏に佇むこの大衆居酒屋にぜひとも足を運んでみてほしい。


火弖ル

 浸し豆、にしんの切り込み、ニラのぬたがのる「肴の3点盛り」890円~。内容は日によって異なるが、日本酒にはこれ!的な肴が盛られる。軽やかな熟成感とコクが美味しい「玉櫻 純米酒」780円(正1合)などを合わせて。ホルモンを味噌炒めにした「ほてっちゃん」580円。チョコレートのようなコク、米由来の甘みがある「旭若松」780円(正1合)のような日本酒は、ホルモンにも負けない味わい深さで、驚くようなペアリングに。


火弖ル

カウンターに並べられた日本酒の数々。「辨天娘」「旭菊」「睡龍」といった、その蔵を代表する、造りがしっかりしたベーシックかつリーズナブルなお酒が揃う。常温で置かれている酒は緩やかに熟成が進み、角が取れた状態に。その味わいを楽しんでもらおうと、常温管理している。瓶内で発酵が緩やかに進むものもあり、その味わいの変化を楽しむの日本酒の魅力のひとつ。燗はチロリを使い、温度をはかりながら丁寧に行われる。

●SHOP INFO

火弖ル

店名:火弖ル(ホテル)本店

住:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-30-4
TEL:0422-23-8033
休:不定休
営:16:00~24:00
予算/1500円~ 個室/なし カード/不可
「天羽の梅」と「金宮焼酎」、そこに内緒の液体を加えブレンドし、ドリンクニッポンの強炭酸で割った「ボール」400円。高アルコールながらスイスイ飲める美味しさの、こちらの名物だ。