酒好き必見! 渋谷で開催中の酒造りの展覧会「47酒店」に行ってきた

伝統×革新で生まれる日本全国の銘酒とは?

47酒店 酒づくりから、その土地の文化を学ぶ展覧会

 この47酒店では、日本酒に焼酎、ビールやワイン、ウイスキーなど、その地方ならではの伝統的な酒造りの技術を守りながらも、そこに若い感性と創意工夫を加えた生産者を47都道府県から1社ずつ選んで展示、そして一部を除いては購入もできるようになっています。その中からいくつか特徴的な商品を紹介していきましょう。

田嶋酒造株式会社(福井)

田嶋酒造株式会社

 ボトルだけ見るとワインのようですが、実は山廃仕込みの「福千歳」で有名な、福井県の田嶋酒造が出品している、れっきとした日本酒。飲み方をわかりやすく提案しながら、日本酒のハードルを下げて楽しめるように造られています。

 左の「ピュア・ライス・ワイン」は、“飲むコシヒカリ”をキャッチフレーズに、ロックや炭酸割り、カクテルにも利用できるワインタイプの日本酒です。“ロンドン酒チャレンジ2018”では、金賞を受賞した逸品。

 その隣、中央に並ぶのは、「キュヴェ」と名付けられた純米吟醸で、ワインボトルシリーズの最新作。冷やしてワイングラスで飲むと、果実のような甘みが楽しめます。そして右側の「サクラ・ロック」は、桜の花から分離に成功した『天然吟醸酵母さくら』で仕込んだもの。ロックにして飲むと、スッキリとした飲み口と深い味わいを楽しめます。

入江豊三郎本店(広島)

入江豊三郎本店

 こちらは、広島県福山市にある入江豊三郎本店が醸造・販売している、「十六味保命酒(ほうめいしゅ)」です。原料に使われるのはもち米と米麹を使った、アルコール分40%の焼酎。麹の酵素でもち米が糖化されて原酒ができるわけですが、そこに高麗人参や桂皮、枸杞子、甘草など16種類の薬味を漬け込み、ろ過してアルコール分14%のお酒になっています。

 口に含むと、パッと甘みが広がりますが、これはもち米から出る自然由来のもので、砂糖や人工甘味料などは一切使っていません。寒い時期には体が温まり、夏バテ防止にも役立つと言われています。

小西酒造(兵庫)

小西酒造

「白雪」で有名な小西酒造がつくり出した、小麦を原料とした上面発酵の発泡酒「スノーブロンシュ」です。コリアンダーとオレンジピールのおかげで、フルーティーな酸味と香りが楽しめる、爽やかな感覚のベルギータプのホワイトビールです。国際的なベルギースタイルホワイトビールのコンクールで3年連続金賞を受賞しています。

数馬酒造(石川)

数馬酒造

 左は能登の海藻由来酵母で仕込み、やはり能登名産であるイカに合うように仕上げられた「竹葉いか純米」、右は特産の能登牛の料理に合わせて造り出された「能登牛(のとうし)純米」。いか純米は、ふくよかな甘みと香り、そしてコクが、能登牛純米は酸味の引き立ったフィレッシュな味わいと芳醇な旨味がそれぞれ楽しめます。2種類とも、伝統的な醸造法に加え、地域の特性を活かした新しい発想で生み出されたお酒です。

梅津酒造(鳥取)

梅津酒造

 日本酒を醸造するには、蒸した米に水と麹、酵母、そして乳酸菌を加えて「酒母」を造るところから始まります。現在の酒造りでは、乳酸菌は人工のものを使った“速醸”が主流ですが、左の「冨玲(ふれい)」は、天然の乳酸菌を使った“生酉元(きもと/酉元は本来1つの漢字。酉偏に元)造り”。この方法は温度や品質管理が難しく、速醸であれば約2週間で酒母ができるのに対し、約1ヶ月と時間も手間もかかります。そのため一旦は廃れていた時代もありましたが、伝統的な造りにこだわって復活させたものです。

 アルコール分は15~16度とやや高く、辛口の中にふくよかな味わいがあり、旨味が広がっていきます。また、「野花(のきょう)」と名付けられた梅酒は日本酒ベース。通常の梅よりも大きく、直径5~6センチにもなる特産の野花(のきょう)梅を漬け込んで造られたもの。野花梅特有の甘酸っぱい果汁がよく出ていて、優しい味わいを楽しめます。

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 ここまでいくつかの特徴的なお酒を紹介してきましたが、実は会期中にキャッシュオンの角打ちスタイルで出展者のお酒を気軽に飲めるチャンスがあります。

梅津酒造 冨玲(ふれい)

 取材日は梅津酒造さんでした。この後、8/24、27、28、29には6代目の梅津史雅さんの解説を聴きながら試飲することができます。また、そのほかの醸造元も、不定期で角打ちや試飲ができる機会があり、順次ホームページやSNSで発表されるので、ぜひチェックしてみてください。

●DATA

47酒店 酒づくりから、その土地の文化を学ぶ展覧会

会期:7月26日(金)~9月2日(月)
時間:11:00~20:00
場所:渋谷ヒカリエ8階「d47ミュージアム」
   (東京都渋谷区渋谷2-21-1)
電話:03-6427-2301
料金:入場無料

公式ウェブサイト
http://www.hikarie8.com/d47museum/2019/07/47-48.shtml

Facebook
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Instagram
https://www.instagram.com/d47_museum/

●著者プロフィール

松尾直俊

フィットネスや健康、医療の記事中心に書きつつも、酒と食も大好きなフリーの編集&ライター。主な飲酒活動地域は、新宿三丁目。ほかに人物インタビューや居酒屋、レストラン、酒に関するもの、文房具や靴などマルチに活動中。