パリで大人気! ミシュラン三ツ星のシェフも惚れ込む日本酒「加温熟成解脱酒」とは?

逆転の発想から生まれた挑戦

 まず、その「加温熟成」とは何かを説明しましょう。日本酒は一般的に貯蔵・保存する際は、温度変化の少ない冷暗所が好ましいとされています。急激な温度変化、紫外線の照射、高温度帯での保存は酒質の劣化につながることも少なくないからです。
 しかし、秋田酒類製造はそのタブーにあえて立ち向かったのです。それは、1944年の発足から、ひたすら旨い酒、新しい酒を追求し続けてきた秋田酒類製造の矜持でもありました。
 そして、秋田酒類製造が生み出した新技術が、強制的に日本酒を加温させることで、劣化ではなく熟成を進めるという境地にたどり着くことになります。

熟成感とフレッシュさの同居。新技術が可能にした「加温熟成解脱酒」の境地

 日本酒に詳しい方なら解脱が何を意味するかわかるでしょう。日本酒を熟成させると、その中に滓(おり)が発生します。このいわゆる熟成滓が発生することを、「解脱」というのです。この解脱はまさに、優れた熟成酒の証。つまり、「加温熟成解脱酒」は、あえて日本酒を加温熟成させることで、解脱に成功したお酒のことをいうのです。しかし、「加温熟成解脱酒」には滓は含まれておりません。なぜか? それは「加温熟成解脱酒」の酒質に答えがありました。

 新技術を導入し、半年間、加温熟成を続けることで、10年クラスの古酒と同じ熟成感が生まれる「加温熟成解脱酒」。しかし、10年古酒のような熟成香と艷やかな色合いを放ちつつも、その味わいは果実を想起させる酸味があり、熟成味というよりフレッシュさを感じさせる味わいなのです。熟成感とフレッシュな味わい。その相反する要素がこの酒に同居しているからこそ、秋田酒類製造はあえて、そのフレッシュさをいかすために、熟成滓をろ過させたのです。そう他の熟成酒が到達できない境地に、「加温熟成解脱酒」は到達した酒だったのです。