誕生50周年、不二家「ホームパイ」は昔の味と違うって知ってた? サクサク感の秘密を取材してきた

ホームパイの美味しい歴史がすごかった!

ホームパイの生みの親は「デリシャスパイ」

 東京・文京区音羽にある不二家さんを訪問しました。入り口でペコちゃん、ポコちゃんにお出迎えされてウキウキ。「ホームパイ」の美味しさの秘密は、同社菓子事業本部マーケティング部の岡部桂子さんが答えてくれました。

 まずはホームパイの歴史から。

「ホームパイの誕生は今から50年前ですが、実はそれよりも前に、ホームパイの生みの親とも言える“デリシャスパイ”があったんですよ」(岡部さん・以下同)

 昭和20(1945)年代後半から、戦後の日本は洋式化が進み、“洋菓子店”が大人気でした。明治43年(1910年)創業、すでに超人気店であった「不二家洋菓子店」は生菓子、焼菓子を多数揃えており、その商品の中に、ギフト用「パイ・アラカルト」という詰め合わせがあったといいます。

「そこに入っていた手作りのデリシャスパイがとても評判が良く、昭和40(1965)年に、当社の菓子事業部でも扱おうということになったんです。菓子事業部というのは、スーパーなど量販店用の商品を扱う部門。ただし、大量に卸す必要があり、早急に機械設備を開発することになったんです」

手間暇がかかるパイ製法の機械化に成功

 パイというのは小麦粉と水などの原料を混ぜて練り、薄く伸ばして、さらに生地と生地の間に油脂(バター)を何度も重ねて焼くというのが基本製法。不二家の「ホームパイ」はその層数がなんと約700層もあるそうです。

 実はパイというのは焼菓子の中でも丸めて焼くクッキーとは違って、非常に難しいお菓子。層が少ないリーフパイのようなものは、間に空気が入る分、壊れやすい特徴があり、かといって層を増やせばそれだけ手間ひまがかかります。

通常のパイは、上に膨らむように焼くけれど、「ホームパイ」は横に広がるように焼く製法をとっているそう
通常のパイは、上に膨らむように焼くけれど、「ホームパイ」は横に広がるように焼く製法をとっているそう

「最初にデリシャスパイを作った職人の方は、かなりこだわりを持って完成させたようで、薄い生地を重ねて密度を濃くしつつ、あのサクサク感を出すには、どのような配合でどのくらいの層の数が一番良いのかを研究していたんだと思います。その職人技をそのまま機械で作ること自体が非常に難しく、機械化するにもかなり苦労したと聞いています」

 それでもなんとか1968(昭和43)年に、半自動設備が完成。沼津にあった工場にそのラインを導入し、「ホームパイ」がデビューしたのです。

1968年「ホームパイ」発売当時のパッケージは箱入りでロゴも英文字
1968年「ホームパイ」発売当時のパッケージは箱入りでロゴも英文字