同じ味を二度と販売しない『ドミニクアンセルベーカリー』のクロナッツの秘密とは?

クロナッツはどうやって生まれた?

ドミニク・アンセルさん
ドミニク・アンセルさん

 オーナーシェフのドミニク・アンセルさんは、世界一のパティシエに贈られる賞『The World’s Best Pastry Chef Award 2017(世界の最優秀パティシエ賞2017)』を史上最年少で受賞するなど、世界的に知られるパティシエの一人。『ドミニクアンセルベーカリー』は2011年にニューヨーク・スプリングストリートにオープン以来、日本に2店舗、2016年にはロンドン、2017年にはロサンゼルスにも進出し、その美味しさで人々を魅了し続けています。

 ドミニク・アンセルさんはパリの北側にあるヴォーヴェ出身。2006年に元々好きだったというニューヨークへ移住します。自身の名を冠した『ドミニクアンセルベーカリー』をオープンしたのは2011年11月。その代名詞ともいえるのが、「クロナッツ」です。フランスのクロワッサンのサクサク感とNYで定番のドーナツを組み合わせたクロナッツは、瞬く間にニューヨーカーの間で人気となり、朝から長い行列ができるようになります。

「創作物の1つとして考えました。何か新しいものを作りたいと当時いた4人のスタッフとブレインストーミングをするなかで、フランス人なのでクロワッサンに思い入れもあったことから、3か月ぐらいかけて開発しました」(ドミニクさん)

 クロナッツは、各国の店舗で毎月新しいフレーバーを販売しているのが特徴です。ドミニクアンセルベーカリーというと独創的かつ美味しいオリジナル商品で知られていますが、シグニチャーメニューであるクロナッツにおいては独自のルールを採用。

クロナッツ「黒糖ザクロ」600円
クロナッツ「黒糖ザクロ」600円

「世界の店舗ごとに違う商品を月替わりで発売する」ことを実践し続け、同じフレーバーを2度と作らないというこだわりを持っていることは、あまり知られていません。その数は、ドミニクさんによると通算120フレーバー(取材時点の2018年3月まで)。同じフレーバーを間違って発売することがないように「クロナッツバイブル」と呼ばれるレシピで管理しているそうです。

 日本で発売されるクロナッツは、ドミニクさんの来日時に、半年分6個を決定するそう。3月は黒糖ガナッシュとザクロジャムをたっぷり詰め込み、黒糖を表面にまぶした「黒糖ザクロ」、4月は白桃ジャムとラベンダーガナッシュを生地の中にたっぷりと絞り、外側にはラベンダーシュガーをまぶした「白桃ラベンダー」で、もちろんその味は販売時期を過ぎると二度と購入できなくなります。

 日本では表参道店と銀座三越店で購入できるクロナッツ。価格は毎月変わらず1個600円(税別)。片手で持つのにはちょっと重い、ずっしりとしたボリューム感で、専用の箱に入れて販売されています。

クロナッツ「白桃ラベンダー」600円
クロナッツ「白桃ラベンダー」600円

 自らに課したこのあまりにも高いハードルについても、ドミニクさんは生みの苦しみは感じておらず、むしろ楽しいと思っているのだとか。すごいこだわりぶりです。

クロナッツは専用の箱に入れて販売
クロナッツは専用の箱に入れて販売