錦糸町の注目ラーメン店『錦糸町中華そばさん式』の究極の1杯をラーメン官僚が実食! そのウマさの秘密とは?

続いて烏賊を知り尽くした店主が作る「烏賊背脂煮干中華そば」もスゴい

「烏賊背脂煮干中華そば」880円
「烏賊背脂煮干中華そば」880円

 続いて、「烏賊背脂煮干中華そば」を実食。「ご承知のとおり、烏賊煮干しを用いた中華そばは、修業先(『ねむ瑠』)の代表的な麺メニューです。『さん式』の『烏賊背脂煮干中華そば』は、ラーメン職人として私を育て上げてくれた『ねむ瑠』へのリスペクトを込めながらも、修業先とは表現の仕方を少し変えています」と谷地氏。

烏賊の旨みをギュッと濃縮したスープ。一口で口内に烏賊の旨みが駆け巡る
烏賊の旨みをギュッと濃縮したスープ。一口で口内に烏賊の旨みが駆け巡る

 スープをすすれば、烏賊の香ばしい風味がビッグバンのように激しく炸裂! 出汁には烏賊の煮干しと炙りスルメを大量に投入。それにとどまらず、カエシにも烏賊の「いしる(魚醤)」を採用。「これでもか!」と言わんばかりに烏賊を使い倒すことで、他の幾種もの素材を圧倒するほど強靭かつ骨太な烏賊風味を演出することに成功しています。

スープの肝となる烏賊煮干し
スープの肝となる烏賊煮干し

 烏賊煮干しは高価な食材を惜しまずに使用。丁寧に水出しした後に火を入れることで、風味を際立たせているそうです。また、香ばしい香りは、スルメをじっくりと炙ることによる産物。「こうして極限まで膨らませた烏賊の風味を、烏賊のいしるで、ギュッと引き締めるんです」。

 烏賊という素材に長年携わり、その特性を知り尽くしているからこそ可能な匠の技。舌上で渦を巻く烏賊のうま味の奔流に、ラーメンでありながら、まるで獲れたばかりの丸ごとの烏賊にかぶりついているような感覚に陥ってしまいました。一度口にすれば最後、脳裏に鮮烈に刻み込まれる――まさに谷地店主にしか作ることができない革新的な味わいです。

「中華そば」とは異なる中太縮れ麺を使用。程よい縮れ具合がスープとベストマッチ
「中華そば」とは異なる中太縮れ麺を使用。程よい縮れ具合がスープとベストマッチ

 このスープに合わせる麺は、切り刃16番の中太縮れ麺。麺肌はモッチリ。食感はみずみずしく、すすり心地は極上。同じ『菅野製麺所』謹製の特注麺でありながら、スープの個性をじっくり見極めたうえで、「中華そば」の麺とは全く異なる形状、食感のものを用いています。

 例えるなら、“静”の「中華そば」と“動”の「烏賊背脂煮干中華そば」。まったくもって対照的なテイストの2品ですが、いずれも、食べ手の胃袋を強く引き付ける訴求力を持ち合わせた逸品。

「大切にしているのは、お客さまに、食を通じ、食を超えた快適な空間と時間を提供すること。これからも、この気持ちを忘れずに頑張っていきたいと思います」と、決意を述べる店主。

 谷地店主であれば、『さん式』を地元に根付かせることができるに違いない。そんなことを考えながら、店を後にしました。

谷地 文明店主のプロフィール

・文京区本郷を代表する名店のひとつである『ねむ瑠』で店長を務め、今般、満を持して、墨田区に独立店舗『さん式』を開業。
・墨田区は、店主が20年以上住み続けている、思い入れのある場所。
・今の店主の目標は、そんな大好きな墨田区に少しでも貢献できるような「地元密着型」のお店にしていくこと。
・6月30日現在、提供する麺メニューは2種類のみだが、今後、オペレーションや人材育成が落ち着いたら、レギュラー麺メニューの品数を増やし、限定メニューにも挑戦したいとのこと。

●SHOP INFO

錦糸町中華そばさん式(さんしょく)外観

店名:錦糸町中華そばさん式(さんしょく)

住:東京都墨田区太平4-2-1 都営太平南アパート 1F
TEL:非公開
営:11:00~22:00(21:40LO)、日曜11:00~21:00(20:40LO)
休:月曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。