ラーメン官僚が激推し! ガッツリ系ラーメンの人気店『千里眼』の2ndブランド『中華そば 千乃鶏』の至極の中華そばとは?

飽きの来ない醤油の魅力が詰まった美しい「中華そば(醤油)」

「中華そば(醤油)」900円
「中華そば(醤油)」900円

 ラーメンをつくるスタッフの方々の手際の良い動きを眺めている間に、注文の品が完成し、眼前に到着。食券の購入から、商品の提供までに要した時間は、わずか5分程度。さすがは『千里眼』のセカンドと言ったところでしょうか。新店とは思えないほど、淀みと無駄のないオペレーションは、食べ手に、これ以上ないほどの安心感を与えてくれます。

 着丼した瞬間から芳香が雄々しく立ち上がり、鼻腔を心地良くくすぐる透明度の高いスープは、思わず見惚れてしまうほどの美しさ。

「2年前にすでにスープはある程度完成していました。当時は、そのスープで新規開店を計画していたのですが、そんな矢先にコロナ禍が発生。出店が困難な状況に陥り、オープンが今年の3月まで延びてしまったのです。が、振り返ってみれば、味のブラッシュアップを図る時間をたっぷり確保できたので、結果的には良かったと思っています」と語る長坂店主。

クリアでありながらキレのある醤油の味が身体に染み渡るスープ
クリアでありながらキレのある醤油の味が身体に染み渡るスープ

 鶏ガラと丸鶏を主軸に据えながらも、パンチ力のある食味を演出するために豚の背ガラ、更なるうま味の増強を図るために大量の昆布を使用。

 その理由としては、長坂店主によれば、「開発当初の段階では、鶏ガラと丸鶏だけで出汁をとっていたのですが、作っているうちにうま味が物足りないような気がしてきまして」とのこと。

 頬が落ちそうになるほど芳醇で、舌上で転がすと種々のうま味が入れ代わり立ち代わり現れる重厚な味わいは、確かに、鶏だけでは到底実現し得ないもの。ブラッシュアップの時間がもたらした大きな成果のひとつだと思いました。

3種の塩を使った鶏のうま味を最大限に感じられる「中華そば(塩)」

「中華そば(塩)」900円
「中華そば(塩)」900円

 タレもまた、こだわりにこだわったものです。「塩ダレは、どの塩を使えば、鶏の素材感を活かし切ることができるかを考え抜いた上で、厳選した3種類の塩を用いています。醤油ダレは、濃口熟成醤油を軸に、埼玉県産の再仕込み生醤油と、和歌山県産の溜まり醤油をブレンドしたものです」(長坂店主)。

 いずれのタレも、2年前のそれとは比較にならないほどブラッシュアップされているそう。これもまた、コロナ禍による試行錯誤の時間が生んだ成果のひとつでしょう。

「中華そば(塩)」は、鶏の魅力をダイレクトに感じてもらえるように、「中華そば(醤油)」は、鶏の素材感を活かしながらも、醤油のうま味も堪能してもらえるように、随所に工夫が施されています。

茹で前に軽く揉み込むことでスープがより絡むようになる
茹で前に軽く揉み込むことでスープがより絡むようになる

 加えて、本年3月の開店後も、スープの味をどんどん進化させているといいます。長坂店主いわく、『中華そば(醤油)』は当初、鶏醤油感満載で提供していたものの、お客さんの様子を見ていると、少食な方は後半に食べ飽きているような気がしたそうです。「そこで本枯れ節を加え、うま味の複層化を図ることにしました」。

 現状に満足することなく、常に味を進化させようとする姿勢。『千里眼』が名店と謳われる理由の一端が垣間見えたような気がしました。

程よく太めでコシのある麺
程よく太めでコシのある麺

 これらのスープに合わせる麺も、「中華そば(塩)」と「中華そば(醤油)」とで、異なるものを使い分けるこだわりよう。

「『塩』に関しては、鶏の素材感を損なわないよう、タレのうま味を程良い塩梅に抑える必要がありました。すると、出来上がりのスープはやや穏やかなテイストになるので、合わせる麺も極端に太くない中太ストレートに。他方、『醤油』はスープのうま味が強めなので、それに負けないよう、ゴワッとした食感の太麺を用いています」

 どちらに使用する麺も、スープが絡みやすくなるよう、提供前に手揉みが施されます。『塩』の麺は、スープの味わいが穏やかなので軽めに、『醤油』の麺は、スープの味わいがビビッドなので強めに揉んでいるとのこと。スープとの相性を考慮し、揉み方まで変える。寸分の手抜かりもない、パーフェクトな仕事ぶりです。

「中華そば」の基本トッピングはメンマとチャーシュー。わさびは別皿で提供(食楽web)
「中華そば」の基本トッピングはメンマとチャーシュー。わさびは別皿で提供(食楽web)

 当然ながら、トッピングにも隙はありません。メンマはスープの邪魔をしないよう味付けを淡めにし、チャーシューは、わさびを無料トッピングとして別皿で提供して食味が単調に陥らないようにするなど、食べ手の箸とレンゲを持つ手を最後まで止めさせないためのギミックが、徹底的に施されています。

 うま味がしっかりと入った親子丼の鶏モモ肉を頬張りながら、ラーメンの丼を両手で持ち上げ、グイっとスープを飲み干す。湧き上がる幸福感は、間違いなく本物。身も心も満足感に包まれながら、店を後にしました。

長坂 淳氏のプロフィール

・ガッツリ系の実力店『千里眼』で、季節限定メニューを含む、数多くのオリジナルラーメンを考案・開発してきた、実力派ラーメン職人。
・今般、『千里眼』とは全くタイプが異なる「鶏を主役とした清湯ラーメン」を提供するセカンドブランドとして、『千乃鶏』をオープン。
・開業後も、「中華そば(醤油)」のスープに本枯れ節を加えたり、「親子丼」に用いる鶏肉を「鶏ムネ肉」から「若鶏のモモ肉」へと変更したりするなど、日々、味のブラッシュアップに余念がない。
・「お客さまに、お腹いっぱいになっていただき、幸せな気持ちで帰路に就いてもらいたい。そんな気持ちを、これからも忘れずに営業していきたいと思います」と店主。

●SHOP INFO

中華そば千乃鶏外観

店名:中華そば千乃鶏

住:東京都世田谷区池尻2-36-11
TEL:03-6805-3536
営:11:00~15:00(L.O)、17:30~22:00(L.O)、土日祝11:00~22:00(L.O)
休:なし

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。