【SCAJ2017】進化形コーヒープレスに会いに行く【2】『アメリカンプレス』|【コーヒープレス古今東西】

挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

【SCAJ2017】進化形コーヒープレスに会いに行く【2】『アメリカンプレス』|【コーヒープレス古今東西】。
食楽web

 前回に続き、まだ使ったことのないコーヒープレスを試すためにやってきた、アジア最大のスペシャルティコーヒーの祭典『SCAJ2017』レポート。今回試させていただいたのは、フレンチプレス(コーヒープレス)ならぬ、その名も『アメリカンプレス』という抽出方法。豆をセットしてプランジャーを押し下げる、と聞くとコーヒープレスと変わらないように感じるが、細部まで見ていくとなかなか違う個性の持ち主であることが分かってくる。

 一般的なコーヒープレスは、コーヒー豆をお湯に浸して一定時間が経った後にレバーを下げ、フィルターでギュッと豆を押さえて液体と分離させる。一方、このアメリカンプレスはフィルターではなく、水圧の力でコーヒーを抽出する構造になっているのだ。

 本体はシンプルかつスタイリッシュ。特徴のひとつであるスチール製のフィルターと内部ポットを見せてもらう。

 豆はこの密閉式ポッドに入れ、フィルターの下部に装着する。ポッドの下部にはお湯の逆流をキッチリ防ぐ医療用のシリコンが。抽出後の豆の残りカスもこの中にキレイに収まるため、中身をポイッとごみ箱に捨てられる。特許を取得した設計だけあり高機能だ。

 こちらのフィルターは100ミクロンという非常に微細な作り。雑味を取り除き、スッキリとしながらも深いコクを引き出す。

 淹れ方の手順は、密閉式ポッドに中粗挽きの豆を入れ、フィルターに装着する。次にカラフェにお湯を注いでから、先ほどのフィルター+ポッドを本体にセットする。通常のコーヒープレスであれば、本体に豆を入れてお湯を注いで4分間浸す……というプロセスになるところ、このアメリカンプレスは、お湯の上に豆の入ったポッドを配置して2分蒸らし、その後じんわりと30秒ほど時間をかけてプランジャーを押し下げる。

アメリカンプレスのゲストバリスタとしてデモ中の『ONIBUS COFFEE』坂尾篤史さん。

 この押し下げるときにポッド内のコーヒー豆に圧力がかかり、抽出が行われる。圧するとき、豆に直接触れているのはお湯だけ。直接フィルターで押す従来の方法より、摩擦が少ないぶんクリーンな味を引き出せる、という仕掛けだ。レバーの動きとともに、お湯がみるみるコーヒーに変わっていくプロセスは眺めていても美しい。

※輸入元による動画
http://www.arktrading.jp/americanpress-order

 ちなみにカラフェ部分は、ガラスのような透明感を持ちながら落としても割れない最新の合成樹脂、トライタンの二重構造。軽さと保温性がありながら、お湯を入れても外側は熱くならない。

 肝心の味わいは、豆の個性を感じながらすっきりと飲める後味のよさが印象的。ドリップで上手に淹れるのはテクニックが必要だが、コーヒープレス同様の手軽さながら、均一な抽出を助けてまろやかな味わいとクリーンな口当たりを引き出せる。12960円(414ml・抽出後のコーヒー量約290ml/税込)と決して安い買い物ではないが、厳選された素材を使っている良さや豆の処理が容易で洗いやすいなど、扱いやすさも含めるとメリットは十分。

 今年日本に上陸したばかりだが、カフェなど専門店での利用も増えているという。アメリカンプレスのこれからが楽しみだ。

●著者プロフィール

写真・文/木内アキ

北海道出身、東京在住。“オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/