睦沢町へ移転オープン!古民家カフェ「furacoco」の帰還。【房総food記】

料理は月替わりの1本勝負!皿の上で感じる季節の移ろい。

のどかな田園地帯にある「furacoco」は、木材と古道具が随所に生かされた落ち着く空間。店舗は、店主・細山さんが大工さんと二人で改装・建築し、完成までに2年を要した。7月のオープン初日には、野田時代の常連客も多く駆けつけた。
 のどかな田園地帯にある「furacoco」は、木材と古道具が随所に生かされた落ち着く空間。店舗は、店主・細山さんが大工さんと二人で改装・建築し、完成までに2年を要した。7月のオープン初日には、野田時代の常連客も多く駆けつけた。

 新生「furacoco」の料理は、月替わりの1種類のみ。和定食の時もあれば、アジア風のカレーがメインの月もあるなど、月ごとに全く違う料理が提供されるため、訪れるたびに新鮮な驚きがあります。

 取材時のメニューは、沖縄の器・やちむんにたっぷり盛られたタイ風グリーンカレー。カレーの上に、夏野菜の素揚げや生のパクチーが鎮座し、食べ応えは抜群。お米はもちろん睦沢でとれたものです。付け合わせのサラダなども酸味の効いた爽やかな味わいで、カレーのお供にぴったり。旅館の厨房が出発点という細山さんの料理は、火入れから盛り付けまで、一品一品が丁寧に作られていることがよくわかります。そのため、こちらもじっくり味わいたくなり、ついつい長居をしてしまうのですが……。

 この日は、農家の奥さんが作業着姿でお茶を飲みに来ていたり、同じ移住者であるご近所さんが夫妻に会いに来たりと、地域の何気ない日常風景を垣間見ることができました。

「さっきも、近所のおじさん6人が軽トラを6台連ねてお昼を食べに来てくれたんですよ! とっても嬉しかったなあ。睦沢のいいところは、人の良さですね。排他的な感じが全然なくて、新参者の僕の店にも喜んで来てくれる。小さな町かもしれないけど、みんな町おこしに熱心な人ばかりなので、とても将来性のある場所だと思っています」

 町内会にも入会し、積極的に町の行事に携わる細山さん。以前は店のことに忙殺されてなかなか地域にとけ込めなかったという思いから、今は主体的に睦沢町民になろうと努力し、ご近所さんとの交流を楽しんでいます。

「お店って、お客さんが入ってきやすい“余白”のようなものが必要だと思うんです。自分の個性をぶつけるだけでは、独りよがりで窮屈な店になってしまう。目的がなくてもちょっと顔を出してみたくなるような、そんな場所でありたいなと思います」

 10年間お店をやってきてたどり着いた、今の答え。肩の力が抜けた「furacoco」だからこそ、訪れた人はここで心底脱力できるのでしょう。これからもしなやかに変化し続けるであろう「furacoco」と睦沢の町を、楽しみに見つめたいと思います。

日替わりスイーツ「黒豆ぜんざい葛プリン Bigサイズ」450円と、本日のドリンク「生レモンのスパイススカッシュ」580円。トロトロの食感のプリンは、卵を使わず、葛と寒天で仕上げる。ちなみに、プリンの器とサラダの皿(料理写真参照)は、陶芸家でもある妻・かおりさんの作品。
日替わりスイーツ「黒豆ぜんざい葛プリン Bigサイズ」450円と、本日のドリンク「生レモンのスパイススカッシュ」580円。トロトロの食感のプリンは、卵を使わず、葛と寒天で仕上げる。ちなみに、プリンの器とサラダの皿(料理写真参照)は、陶芸家でもある妻・かおりさんの作品。
店の奥には日用雑貨のギャラリーも併設。人気商品のアフリカのカゴ(写真)をはじめ、保存瓶や木の匙、タオル類等々、夫妻が実際に使用して気に入ったものだけをセレクトして販売。かおりさんの器もこちらで購入可能。
店の奥には日用雑貨のギャラリーも併設。人気商品のアフリカのカゴ(写真)をはじめ、保存瓶や木の匙、タオル類等々、夫妻が実際に使用して気に入ったものだけをセレクトして販売。かおりさんの器もこちらで購入可能。

●SHOP INFO

店名:furacoco(フラココ)

住:千葉県長生郡睦沢町妙楽寺1887
TEL:0475-36-5700
営:11:30~17:00
休:日
カード:使用不可
駐車場:6台(無料)
首都圏中央連絡自動車道・茂原長南ICにて下車、県道27号線・同150号線を睦沢方面へ20分ほど。
※価格はすべて税別表記。
※席の予約は、11:30~又は13:30~のみ受付(各時間帯に3組まで)
※2017年内は月の後半のみ営業。不定期営業のため、来訪時は要事前問い合わせ又はHPを確認。
HP:http://furacoco-nuu.com/

●著者プロフィール

白井いち恵

千葉市育ち&在住の編集者・ライター。『千葉の本』『千葉の本2』(京阪神エルマガジン社)を手がけ、出身地・千葉県の知られざるおいしい&楽しいを大特集した。路線バス好きでもあり、著書に『東京バス散歩』(同上)。