地元産の米と水が育む「PIZZA storia」の天然酵母のピッツァ。【房総food記】

「ここが出来てとても嬉しい」地元住人からの言葉を励みにして。

 注文を受けてから、その場で生地を伸ばして一枚ずつ石窯で焼かれる古山さんのピッツァ。薄いクリスピー生地に見えますが、「はるゆたか」独特のモチモチ感がしっかりあって、とても食べ応えのある生地です。
 その上に、塩気の強いイタリア産チーズと、ミルキーな国産チーズの2種類をのせることで、塩気もみずみずしさも兼ね備えたコクのある味わいになります。

 この日は、オススメだという1日5食限定のスペシャルピッツァ、「黒トリュフペーストと4種のチーズピッツァ 長柄町産オーガニックはちみつ付き」をオーダー。お隣の長柄町で親戚のおじさんが養蜂しているというオーガニック蜂蜜をたっぷりかけていただきます。他にも、定番のマルゲリータは、濃厚なイタリア産トマトソースが絶妙で、まるで飲むように平らげてしまう一枚。一人一枚食べられるか……なんて心配は無用。女性でもぺろっといけてしまいます。
 嬉しいことにテイクアウトのピッツァは15種類あり、週末の昼時に年配のご近所さんが楽しげに引き取りに来る姿が印象的でした。

「オープンして1年経ちましたが、“ここが出来てとても嬉しい”という声をよく聞きます。特に地元の人からは、“こんな田舎にこういうお店ができると思わなかった”って(笑)。最初は反対していた実家の家族も、今は母が定期的に友達と会合をしてくれたり、姉が畑の野菜を届けてくれたり、応援してくれています」と古山さん。
「地方は飲食店の選択肢が少ないけれど、都内にも引けを取らないレベルのお店を続けることで、この町にたくさん人が来てくれたらなって思っているんです」
 地元育ちだからこそずっと考えてきた、古山さんならではの故郷の盛り上げ方。熱い言葉の裏に、限りなく優しい長南町への愛情が見え隠れします。

 カウンター席もあるため、平日は1人客のサラリーマンやご近所さんが訪れたり、休日には外房の海辺を目指す県外からのドライブ客でにぎわう「ピッツァ ストーリア」。その名は、イタリア語で「物語」の意味ですが、
「うちのピッツァを食べたり足を運んでくれたりすることで、人との繋がりだったり、何か物語が始まる場所になってくれた嬉しいな」
 今日もその思いに薪をくべ、若きピッツァ職人は、里山でピッツァを焼くのです。

緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
取材時のスペシャルピッツァメニューから、「黒トリュフペーストと4種のチーズピッツァ 長柄町産オーガニックはちみつ付き」(限定5食/1枚2,000円税込)。これを嫌いな人はいないのではと思うほど、4種のチーズと蜂蜜の組み合わせは至福の味わい! 写真右の蜂蜜が、古山さんのおじさんが隣町・長柄町で養蜂・採取しているオーガニックのもの。毎年初夏~9月頃まで提供中。
緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
お店のコーヒーは、古山さんが敬愛する九十九里の人気自家焙煎珈琲店「KUSA.喫茶」に特別に焙煎してもらっているもの。「うちの生地の甘みと相性がいい『マンデリン』という品種です」。ランチドリンクでも注文できるほか、ディナー時は「アッフォガート」(エスプレッソのジェラート)としても提供中。試してみたい!
緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
大きくとられた横長の窓が周囲の緑の風景を切り取り、まるで一幅の絵画のよう。店内にいながら、外の自然と地続きになっているように感じられて気持ちがいい。こちらの空間の設計は「KUSA.喫茶」と同じ設計士さんに、施工は小・中学校時代の同級生に依頼した。こんなところにも地元愛を感じる。「年内にはテラス席も作る予定なので、ペット連れの方にも来ていただきたいですね」
緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
入口へと続くアプローチには、様々な樹木や草花が植えられている。花壇は古山さんのお母さんとお姉さんが丹精したもので、心地よい風が吹き抜ける。
緑の風吹く天然酵母の窯焼きピッツェリア【房総food記】
店内にも庭先にも木のぬくもりが感じられ、気軽に入れる雰囲気が嬉しい。年配のご近所さんから、若い家族連れのドライブ客まで、様々なピッツァ好きを虜にしている。

●SHOP INFO

店名:PIZZA storia(ピッツァ ストーリア)

住:千葉県長生郡長南町棚毛96-9
TEL:0475-44-5939
営:11:00~15:00(ランチタイム)、
  15:00~17:30(カフェタイム)、
  17:30~20:00(L.O.19:30)(ディナータイム)
 (日曜のみカフェタイムなし、11:00~17:30(L.O.17:00))
休:木&第1・3水
カード:使用不可
駐車場:15台(無料)
首都圏中央連絡自動車道・茂原長南ICにて下車、長柄方面へ直進し5分ほど。
※カフェタイムはドリンクとデザートのみの提供。事前予約のピッツァのテイクアウトは可能(ピッツァのテイクアウト予約は当日もOK)
※空席・予約情報などはお店のFacebookにて。複数人での来店は予約がベター。

●著者プロフィール

白井いち恵

千葉市育ち&在住の編集者・ライター。『千葉の本』『千葉の本2』(京阪神エルマガジン社)を手がけ、出身地・千葉県の知られざるおいしい&楽しいを大特集した。路線バス好きでもあり、著書に『東京バス散歩』(同上)。