隠れラーメン激戦区・本郷三丁目の大型新店『麺屋鈴春』で至極の「醤油らーめん」を食べてきた!

鶏清湯系の優しい香りと味が染みわたる一杯

 暖簾をくぐると、進行方向右手に券売機が鎮座。提供されているのは「醤油らーめん」、「塩らーめん」の2種類の麺メニューとそのバリエーション。加えて、毎週金曜には「ブタジマくん」という名の二郎インスパイア系ラーメンを提供しています。

「醤油らーめん」が券売機筆頭メニューですので、まずは、そちらをいただくのがセオリーということでしょう。私も、迷わず「醤油らーめん」のボタンを押しました。

「醤油らーめん」900円
「醤油らーめん」900円

 待つこと数分。提供された「醤油らーめん」は、明るい褐色を呈した透明感のあるスープの中を、姿形の良い細ストレート麺が悠々と泳ぐ顔立ち端整な一品。脂が適度に乗った大ぶりの豚ロース肉が、丼の中央で存在を声高に主張しています。

 ラーメンのタイプで言えば、着丼した直後から芳しい鶏の香りが宙を舞い鼻腔を優しくくすぐる、鶏出汁ベースの清湯系。言わずと知れた、ここ数年における東京ラーメンシーンで最も熱いジャンルに属する1杯です。

「修業先で様々なタイプのラーメンの作り方を教わりましたが、今、一番盛り上がっている『鶏清湯』に敢えて挑戦し、自分の腕がどの程度通用するのか試してみたかったんです」と笑う鈴木店主。なるほど、提供するラーメンを修業先と同じ「濃厚鶏白湯魚介」にしなかった理由は、そういうことだったのですね。

 奥久慈シャモ&大山鶏のガラに名古屋コーチンの丸鶏。各々の鶏の特性を的確に把握した上で、それらを丁寧に炊き上げ持ち味を引き出した出汁は、味蕾に触れた瞬間、アミラーゼの分泌が止まらなくなるほど上質かつ分厚い旨みを誇ります。

 出汁と合わせる醤油ダレも、新店とは思えないほどの出来映え。滋味深い節系乾物を溶かし込み、この1杯の主役である鶏の風味をより一層引き立てるギミックを駆使したり、切れ味鋭い『岡直三郎商店』や、甘み豊潤な『ちば醤油』の醤油を採用するなど、同店主がラーメン作りの勘どころを熟知していることが分かります。

 こんなフルボディのスープの相棒役を務め上げるのが、修業元でも採用されている名門製麺所『心の味食品』のストレート麺。スープを過不足なく持ち上げ、実直に口元へと運び込む姿に無類の頼もしさを感じます。トッピングのロース肉のクオリティも絶佳。

「オープンから約1ヶ月が経過し、ようやく商品のカタチが定まってきました。なので、これからはスープの構成をあまり変えず、タレに用いる乾物の種類や、醤油の配合を吟味し、磨きを掛けていきたいですね」と意気込む鈴木店主。

 開業して日が浅いにもかかわらず、既に2020年における最注目店の一角と目されている同店。今後の動向からも目が離せそうにありません。

店主(鈴木勝明氏)プロフィール

・新小岩に本店を構える名店『麺屋一燈』で修業し、幹部へと上り詰めた凄腕。
・『鈴春』の基幹メニューが鶏清湯系であるのは、上記の「最激戦分野において自らの力量を試してみたかった」という理由のほか、「自分自身が毎日食べたいと思えるラーメンが鶏清湯だった」ことによるもの。
・「醤油らーめん」に用いる「鶏油」を出汁とは別に炊いて作り、鶏の素材感の最大化を図ろうとするなど、要所を的確に押さえたラーメン作りは、後進の模範となるだろう。

●SHOP INFO

麺屋鈴春外観

店名:麺屋鈴春

住:東京都文京区本郷2-26-1 福重ビル 1F
TEL:03-6801-5233
営:11:00~15:00、18:00~20:00、土曜11:00~15:00
休:日曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。